時計の針は巻き戻され……
代表チームの周辺に漂流していた雑音は、今回の連勝でひとまず収まった。では、チームは成長しているのだろうか。
今回の2試合では、ブラジルW杯に出場した内田篤人(26歳、シャルケ/ドイツ)、長谷部、遠藤、今野の4人が、アギーレ監督のもとで初めてプレーした。システムも4-2-3-1が採用された。時計の針が巻き戻しているような印象を、抱かせるかもしれない。ホンジュラス戦とオーストラリア戦は、“ザッケローニの遺産”で勝ったようなものだからだ。
遠藤と今野の招集には、個人的にも驚かされた。とはいえ、4年後を見据えて若手に一新したメンバーで、来年1月のアジアカップに臨むのはリスクがある。ガンバ大阪での遠藤と今野は、高水準のパフォーマンスを維持している。結果重視で臨むなら、アジアカップでもブラジルW杯に出場した経験者に頼るべきだ。
ポジションは「与える」ものでなく「奪う」もの
そもそも日本代表は結果を求められるチームであり、国際試合は選手に経験を積ませながら育てる舞台ではない。かつてはそういった性格を帯びていたこともあるが、W杯に5大会連続で出場している現在は違う。結果を積み上げることで国際的な競争力を高め、選ばれる者にプライドと自覚、責任と使命を抱かせるのが日本代表である。その時々で実力のある選手がスタメンを勝ち取ることは、ポジション争いを公平にする。「私は年齢ではなく質で選んでいる」とアギーレ監督は話すが、遠藤はホンジュラス戦で、今野はオーストラリア戦でゴールをあげた。得点シーン以外にも、彼らはしっかりと持ち味を発揮した。キャプテンマークを巻いた長谷部も、ホンジュラス戦に出場した内田も──彼はベテランと呼ばれる年齢ではないが──若手や中堅との違いを見せつけている。
アジアカップでは監督の「色」に期待
それでは、アギーレ監督のチーム作りは、どのように評価するべきだろうか。今回の連勝は、既存の連携と戦術によるところが大きかった。このメキシコ人指揮官の仕事が勝利に占めた割合は、率直に言って小さい。彼が就任したことによる変化は、6試合を終えても見えていない。
オーストラリア戦では4-3-3から4-2-3-1へ変更したが、非公開練習では2トップのシステムにも時間が割かれている。選手の力量を見極めつつ、戦い方の幅を拡げるための準備を重ねてきたと理解すれば、そろそろ監督の色が見えてきてもいい。
就任以降の強化は「計画どおり」と、このメキシコ人指揮官は言う。来年1月のアジアカップでは「アギーレだから勝てた」と言われる試合を見せ、優勝を勝ち取らなければならない。