肝臓・すい臓・胆のうの病気/脂肪肝

メタボ基準は男性に厳しい?メタボと脂肪肝の関係とは

メタボリックシンドロームの診断基準では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm、女性90cm以上となっています。でも、男性の方が体格が大きいのに、腹囲は逆に小さいなんて、メタボ基準は男性に厳しすぎると思いませんか?実はこの基準、メタボと病気の関係を基にして決められているのです。メタボと脂肪肝について解説します。

今村 甲彦

執筆者:今村 甲彦

医師 / 胃腸科・内科の病気ガイド

メタボの基準は男性に厳しい?

メタボにレッドカードの女性

メタボ基準は男性に厳しい?

厳密に言うと、男性に特に厳しいということはありません。これは、女性の脂肪が皮下に蓄積しやすいのに対して、男性は脂肪が内臓に蓄積しやすいということに基づいています。内臓脂肪面積が同じなら女性は皮下脂肪が多く蓄積しているため、これを考慮して女性のウエスト周囲径を長くしているのです。

では、なぜ内臓脂肪を問題にするのでしょう?それは、メタボに合併する疾患の大部分が、内臓脂肪蓄積に関与しているという事実があるからなのです。

内臓脂肪による病気のメカニズムが明らかに

内臓脂肪型肥満の場合、内臓脂肪が過剰に蓄積すると、腫大した脂肪細胞から血糖や脂質、血圧などを調整しているホルモン(アディポサイトカイン)が異常をきたし、糖尿病や脂質代謝異常(コレステロール値の異常)、高血圧などが起こることがわかっています。

メタボ治療の、カギ分子も発見されてきました。東京医科歯科大学大学院の菅波孝祥特任教授と小川佳宏教授の研究グループが、「ミンクル」と呼ばれる病原体センサー分子が、肥満に伴う脂肪組織の線維化を促進させる鍵となる分子であり、脂肪肝や糖尿病の促進因子であることを突き止めました。これは、2014年9月19日付の英オンライン科学誌Nature Communicationsに発表されています。

「日本人は軽い肥満でも要注意!」の理由とは

アメリカでは、BMI(body mass inndex:体重(kg)÷身長(m)の2乗)が30以上の肥満が33%もいて、実に日本の10倍にも及びます。しかし、驚くことに、生活習慣病といわれる高血圧、高コレステロール血症、糖尿病などの有病率は日本とアメリカで大きな変わりはないのです。

いろいろな国の人々

肥満にも人種の違いがあります

これは、人種差による体格の違いや食生活など生活習慣の違いによるものといわれています。日本人はもともと農耕民族で、低エネルギー・低脂肪食を食べてきました。それがここ何十年の生活の変化(欧米化)により高エネルギー・高脂肪食を摂ることが多くなり、もともとエネルギー効率が良い日本人は脂肪を溜めこんでしまうようになったのです。

日本人は特に皮下脂肪より内臓脂肪を蓄積しやすく、肥満の程度が軽いにも関わらず、肥満に起因する疾患が起こりやすくなっています。以上のような理由から、肥満に対しては欧米より厳しい基準がとられ、日本ではBMIが25以上が肥満とされているのです。

肥満とともに急増している脂肪肝

生活習慣の欧米化を背景とした肥満人口の急増に伴い、肥満を基盤とする非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver;NAFLD)も急増しています。日本におけるNAFLDの有病率は約10~40%と高く、肥満度に比較して欧米人より内臓障害をきたしやすい人種とされています。

NAFLDのうち約10~20%が、肝硬変や肝細胞がんへ進行し得る非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis;NASH)とされています。

現在、肝細胞がんの大半はC型肝炎ウイルス由来ですが、現在開発されている新薬により、今後C型肝炎ウイルスは完治する病気になると考えられています。これからは、NAFLD/NASHが、肝硬変や肝細胞がんの主要な原因になっていくでしょう。

脂肪肝の治療法は食事と運動

メタボ予防に運動する人々

メタボには食事と運動療法が有効です!

NAFLDやNASHの治療で、最も効果的なのは食事・運動療法による体重コントロールです。薬物治療に関しては、さまざまな研究・報告が行われていますが、効果が確実である薬は現在のところありません。

体重コントロールは標準体重を目標とするのではなく、現体重の3~5%の減量が推奨されています。特定健診・保健指導の実績から、3%の減量でも、脂質、血圧、肝機能などの改善があることが示されています。

まず、3~6カ月で3%の体重減少を目指し、3%減少しても検査成績などが改善しない場合は、さらに3%減を試みてみるのがいいでしょう。


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