「リスクマネジメント」は近年出題傾向に
第26回の試験では以下のような問題が出題されました。「利用者の安全を確保するために留意すべきこととして、最も適切なものを1つ選びなさい」。選択肢は以下の通りです。
1 リスクマネジメントは、事故が起きてからその体制を検討する。
2 利用者のけがや事故の原因の1つに、生活を制限されることから生じるストレスがある。
3 施設内では、介護職が取扱いに慣れた歩行器を優先して使用する。
4 利用者本人に対して、積極的に身体拘束への同意を求める。
5 事故報告書は、管理者以外、閲覧することができないように管理・保管する。
答えは2です。
1について、リスクマネジメントとは事故発生を未然に防止することなどにより組織の損害最小限に食い止めるのが目的です。
3について、介護職ではなく、利用者が慣れたものでないと事故の原因にもなります。
4について、身体拘束とは施設や病院などで高齢者を「治療を妨げる行動がある」事故の危険性がある」という理由から、ひもや抑制帯、ミトンなどの道具を使ってベッドや車椅子に縛ったりすることです。
薬によって動きを制限することも身体拘束となります。身体拘束は切迫性、非代替性、一時性の3つの要件をすべて満たした場合を緊急やむを得ない場合の要件としていますが、介護施設や指定居宅サービスなどでは、原則禁止しています。
こんな事例がありました。
認知症で徘徊がある妻に対し、夫は徘徊を防ぐためにドアに鍵をかけて外出を食い止めようとしました。しかし夫が目を離した隙に、妻は外に出ようと2階の窓から飛び降りてしまったのです。幸い妻は軽傷ですみましたが、妻にとっては外に出られないストレスがたまり、こうした行動に出たのかもしれません。
徘徊とはいっても、認知症の人には外に出て歩く、本人なりの理由があるのです。
忘れられない「身体拘束」の青あざ
私も祖母の介護をしているとき、病院で拘束の光景をたびたび目にしました。「点滴を抜く可能性があるから」との理由で、浴衣のひもなどで腕をベッド柵に縛られていたり、指の動きを制限するミトン(グローブ)で手を覆われていたこともあります。ひもで縛られたことにより、腕に残ってしまった痛々しい青あざが今も脳裏に焼き付いています。
2001年の厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」によると、身体拘束は身体的弊害(車いすに拘束しているケースでは無理な立ち上がりによる転落など)、精神的弊害(屈辱、あきらめなど)、社会的弊害(社会的な不信、偏見を引き起こす)を招くとしています。
いかがでしたか?
私が講師をつとめる介護福祉士受験対策講座も9月からスタートしています。受講者は病院で働く介護職の方、訪問介護事業所で働くヘルパーのみなさんなどです。「難しい~」と毎回頭を抱えながらも一生懸命取り組んでおられ、毎回質問攻めにあっています。
「どこがわからないかわからない」と言う人もいますが、まずは「わからないところを具体的に質問できるようになること」。これができれば一歩合格に近づいた証拠なのです。
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