お金のないロイヤルズが取った戦術とは
メジャーリーグでは、ワールドシリーズで世界一になるよりも、ワールドシリーズへ進出する方が難しいといわれている。選手たちもワールドシリーズに出たことを誇りに思い、ファンもそれを称える。しかも、1985年以来、長らく低迷し、お金もなかったロイヤルズが勝ち上がったとあってはなおさらだ。延長戦4戦4勝、1点差ゲーム4戦4勝という内容も、全米の熱狂を後押ししている。
思えば最初のワイルドカードゲームが最大の危機だった。八回表を終わってアスレチックスに7対3とリードを許したが、八回裏に3点、九回裏に1点を入れて追いつき、延長十二回に勝負を決めて、勢いが付いた。これが短期決戦の怖いところだろう。
チームの選手総年俸は、2011年が30球団中で最下位、2012年が26位、2013年が22位と少しずつアップしてきたが、ヤンキースなどの金満チームに比べれば圧倒的にお金がない。そこでロイヤルズはどういう戦術をとってきたか?
投手陣は、大金のかかる先発投手に投資するのではなく、救援投手陣の補強に重点を置いた。それが、ヘレーラ、デービス、ホランドの“逃げ切りトリオ”だ。この3人はポストシーズンに入ってからも圧倒的な働きを見せ、先発が何とか6回まで持てば勝ちに持って行けるようになった。このことを受けて、米フォーブス誌は「ロイヤルズの成功は野球の資金分配を変えるかもしれない」と高く評価した。
野手陣は、長距離砲を獲得する資金がないため、小技と機動力を重視した。今季、レギュラーシーズンのチーム本塁打数は30球団最低の95本だったが、盗塁数153は堂々のトップ。いわゆる“スモール・ベースボール”で快進撃を続けてきたのである。
>>限られた打席の中で結果を出した青木宣親