寝台特急「北斗星」、札幌を出発
札幌駅4番線。夕方の帰宅ラッシュが始まりかける頃、「北斗星」は小樽方面にある車両基地から回送されてきた。ブルートレイン12両編成(電源車を含めて)の先頭に立つのは客車に合わせて青く塗られたDD51形ディーゼル機関車重連(2両連結)。凸型のいかついスタイルの機関車だが、先頭には優美な北斗星のヘッドマークを誇らしげに掲げている。5分程の停車の間に寝台を探して荷物を棚に乗せ終えると、機関車が甲高い汽笛を鳴らして出発。列車は静かにホームを離れ、ゆっくりと加速していく。ネオンに輝く札幌の街並みが窓の外を流れていくのを見ていると、「ハイケンスのセレナーデ」のチャイムが鳴り、車内放送が始まった。上野までの停車駅、青函トンネルに入る時刻(22時40分頃)まで丁寧な案内が告げられる。そして、列車は旭川方面へ向かう函館本線と分かれ千歳線に入っていた。
「北斗星」の車内をご案内
「北斗星」には最高級のA寝台1人用個室ロイヤル、2人用個室ツインデラックス、B寝台2人用個室デュエット、B寝台1人用個室ソロといった個室のほか、昔ながらのカーテンで仕切られただけの開放2段式B寝台がある。相変わらずの人気で個室は早々と満室となってしまい、乗車10日程前だと、僅かに開放2段式B寝台が残っているだけだった。それも札幌発だから空席があるのであって、やはり上野発札幌行きの方が人気は高い。確かに、目覚めてカーテンを開けたら北海道の原野を走っている方が雰囲気的に良いからだ。それでも、「北斗星」に乗れただけでもラッキーと思うべきかもしれない。ある意味、2段式B寝台は「昭和の寝台車」という旅情が楽しめる古き良き時代の車両なのだから、その行程を楽しんで一夜を過ごすことにしよう。
「北斗星」の楽しみは寝台車だけではない。せっかく乗車するのだからと、事前に駅の窓口で食堂車でのディナー券を購入(乗車3日前までに予約すること)しておいた。さらに乗車後、しばらくして食堂車へ向かい、係員からシャワー券を購入。先着順の予約制で、すでにかなりの時間帯が埋まっていたが午後10時30分からの30分間を予約できた。
また、「北斗星」には車内販売があって、駅弁やドリンクをはじめ、「北斗星」グッズなども売っている。鉄道ファンは、ついつい何らかのものを買ってしまうもの(笑)。私も女性販売員に乗せられて、おすすめのグッズを少し買うこととなった。
昼間なら広大な原野の中を走る区間なのに、あいにく列車は闇の中をひた走る。苫小牧、登別、東室蘭と停車。食事の時間より少し前だが、余裕をもって車内を移動し、食堂車の隣の6号車にあるロビーで待つことにした。6号車は1人個室ソロが並び、車両の半分ほどがロビー室でソファーがある。DVDを流しているテレビ、ソフトドリンクの自販機、それにシャワー室が2つと賑やかな造りだ。深夜と早朝を除くと絶えず誰かいて、車内の人気スポットでもある。
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