トータルなコストで得か損かをとらえよう
最初にここでいう「お得感」について説明しておきます。この表現は決して、「安い」ということではありません。住宅を取得する際の金額、いわゆるイニシャルコストではなく、省エネやそれに伴う光熱費削減効果、さらには安心・安全に住むことができるなどという観点を含めた、長い目で見たトータルなコストという視点です。そうした前提をご理解いただいて上で、改めて「分譲住宅」という住まいのスタイルについておさらいしましょう。まず、考えていただきたいのが、「なぜ分譲住宅というものがあるのか」ということです。注文住宅に比べてどのような違いがあり、メリットは何なのでしょうか。
分譲住宅は一般的に、注文住宅より安価に購入することができます。ハウスメーカーなどの事業者は、大なり小なりの土地を入手し、そこをいくつかの区画に区切り、建設資材を一括で購入し、その開発に適した大工さんや職人さんによって住宅を建て、販売します。
これは、効率よく住宅を供給するためです。一方、注文住宅はオーダー(注文)を受けてから、建設資材の調達や大工・職人さんの手配をするケースもあり、どちらかというと効率の面では劣ってしまいます。その効率の違いが、両者の価格の違いに表れてきます。
ここまでは、大きな意味で住宅事業者のメリットになります。次に、私たち消費者の視点でみていきます。まず第一に、基本的に出来上がった建物を見てから判断できますので、物件ごとの善し悪しを判断しやすいことが挙げられます。それが最も大きな魅力でしょう。
土地や建物の広さ、間取りや住環境、さらには価格などを実際に判断できるというわけです。特に、土地の購入は個人で行うと大変ですから、それを気にせずに購入できるというのは私たちにとって有難いことです。
分譲住宅のメリットとデメリットとは?
また、分譲住宅では基本的に宅地の造成やガスや水道などのインフラ整備も行われています。これらも個人で行うより、分譲住宅地全体で行った方が効率的です。このほか、各住棟の日照や通風、プライバシーなどもあらかじめ計画されますから、そうしたことを私たちが気にする必要もありません。とはいっても分譲住宅にはデメリットもあります。それは事業者によって質にバラツキが多いこと。例えば一つの土地を4区画に区切る事業者もいれば、6区画やさらに多い区画に区切る業者もいます。どちらが質として優れているかは、お分かりだと思います。
また、建物のデザインや間取りが画一的な分譲住宅が多いのも気持ちの面ではマイナスになることもあるでしょう。価格設定は色々ありますが、せっかく高い買い物をするわけですから、他人と同じような住宅に住みたくないという人も多いはずです。
出来上がった物件で判断できるということは、どんな過程で施工が行われたのか判断しづらいということにもつながります。これは注文住宅であれ同じことなのですが、分譲住宅であっても、本来は、意中の物件と同じ事業者の違う物件の施工の様子をチェックするといった慎重さが求められるということです。
ちなみに、分譲住宅は大きく二種類に分けられます。一つは建物が完成した状態の「建売住宅」、もう一つは土地を購入してから建物を建てる「売建住宅」です。ただ、前者ではこんな建物が建ちますという前提で販売が行われるケースがあります。
後者は、ある程度の制約がある中で注文住宅のように住宅づくりを行うスタイルで、「建築条件付き」という表現もされます。分譲住宅と一言でいっても色々あるということです。
さて、次のページではあるハウスメーカーの事例を紹介しながら説明していきます。