助産院での出産は安全?
日本の妊産婦死亡率は10万件に3~4人
現在、日本の妊産婦死亡率は出産10万件に3~4人で、世界でもトップクラスの安全にお産ができる国の1つです。しかし日本より優れた国も多く、それらの国と比べると、日本では分娩時の大量出血が原因となった比率が高いことに改善の余地があるとも言われています。これは迅速な輸血などの産科救急処置の遅れが一因と考えられてきました。かつては大学の系列(学閥)や、産科医と助産師が対立する構図も一部にあり、病院、産科診療所、助産所の連携が不十分だったことも事実ですが、近年、産科医不足、分娩施設の減少が顕著になる中、お産の安全は妊婦個人の問題ではなく、国や地域全体の課題として考えられるようになり、産科救急システムを改善する努力が続けられています。
しかしどれだけリスク管理しても、わずかな危険性は残ります。危機的な状況で、経験豊富な産科医、助産師は、自らの経験を元に全力で対処しますが、及ばないこともあります。自然を相手とするベテラン登山家などと同様、経験豊富な人ほど、人間の知恵が及ばない自然現象への畏怖は失わないものです。前述の通り日本の妊産婦死亡は約3万件のお産に1件の割合なので、例えば5千件の出産を担当した助産師は、助産師の中では経験の豊富な方と言えるかもしれません。しかし、どんなに経験が豊富であっても、自らの経験に基づく単純な自信は危険です。
助産院での出産を考えている方へ
助産院での出産を考えている方は、まず、日本助産師会の次のページを参考にしてください。助産院で出産できるかどうかの基準が判ります。■ 助産所での出産を考えている方へ(日本助産師会)
助産院での出産を希望しても、リスクがあると判断されて希望がかなわないこともありますが、よく相談してリスク評価には従いましょう。リスクが指摘されたにもかかわらず助産院にこだわり、問題が生じれば、低リスクで助産院での出産が可能な他の人にも迷惑をかけることになります。
日本助産師会はさらに詳しく、助産師が主体となり管理できる妊婦の基準と、正常分娩急変時のガイドラインを定め、ネットで公開しています。
■ 助産業務ガイドライン2014(日本助産師会)
(IV 妊婦管理適応リスト V 正常分娩急変時のガイドライン)
医療法では、助産所開設者は連携医療機関との間で、嘱託医契約が義務づけられており、その契約書には、
- 相互に緊密な協力関係を築き、妊婦・褥婦および胎児・新生児の安全を確保すべく双方最善の努力をする。
- 妊娠初期、中期・後期の2~3回、連携医療機関で妊婦健診を行い、診察、血液検査、超音波検査などを行う。
- 妊娠出産の経過が正常から逸脱した場合は、時期を逸することなく、医療機関に搬送する。
妊婦リスクスコアで自分のリスクレベルに合った産院選びをしよう
妊婦健診で妊娠リスク診断
妊娠リスクスコアは妊婦健診を始めた時のチェックリストと、妊娠8~9ヶ月のチェックリストの2種類があります。
- 初診時妊娠リスクスコア
妊婦健診を始めた時点で、年齢、体重、喫煙、飲酒、感染症の有無、高血圧や糖尿病などの既往歴などをチェックします - 妊娠後期リスクスコア
妊娠8~9ヶ月、臨月が近づき、それまでの妊娠経過をふまえて、母と子の出産リスクを判断します
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