大人は活字依存的な傾向がある
子供に文字への興味を誘いたい
では、情報を選ぶとき、私達大人は「聞く情報」と「読む情報」のうち、どちらを好むと思いますか?
それは、読む情報。
私達大人は、目からの情報に、より大きな信頼を置く傾向があることが分かっています。
例えば、東京のど真ん中で道に迷ったとします。
- 通行人に「銀座は右ですよ」と教えてもらった情報
- 「銀座左折」という看板による情報
ではこの傾向はいつごろから始まるのでしょうか? 文字を少し覚えたばかりの3歳の子だったらどちらの情報を選ぶのでしょうか?
耳からの情報と目からの情報、3歳の子はどちらを信頼する?
最近、アメリカの大学のチームが、これを検証するために、3歳から6歳の子を対象にある実験を行いました。まず、2本のホースを準備。1本は先まできちんと抜けているもの(正解)、もう1本は途中がふさがっているもの(不正解)でした。そして子供達に、どちらが正しいホースかを当てるように言いました。その際、人形Aと人形Bから、それぞれ次のようなヒントをもらいました。
人形Aは、口頭でヒントを伝えました。
「青のホースが正解だよ」
人形Bは、文字でヒントを伝えました。
封筒を開け、紙を取り出し、「ここに赤のホースが正解と書いてあるよ」
この2つの相反するヒントに、子供達はどうリアクションしたでしょうか?
子供の回答に、年齢による差は見られませんでした。リアクションに違いが見られたのは、文字をすでに読めるか、まだ読めないか、という点でした。
文字をまだ読めないグループは、聞く情報(人形A)と文字からの情報(人形B)のどちらか一方に偏る傾向はありませんでした。しかし、文字を少し読めるようになっている子は、文字からの情報(人形B)を好んで選ぶ傾向が強く、その割合は75%にも及びました。
つまり、文字を覚えて間もないうちから、子供達は活字で書かれた情報を好むことが分かったのです。
実はますます活字依存的になってきている!?
大人のみならず、子供も、幼少時から活字情報を信頼するという今回の結果、いかが思われましたか? 想像以上に早い時期から、文字に頼る傾向が出てくるのですね。最近言われている「活字離れ」は、本や新聞などを読む量が減ってきたという現象で、その背景には、ネットやスマホなどの新たな媒体の普及が関係しています。ということは、活字を追うという傾向は今も昔も変わっていないとも言えます。むしろ、情報を追い求める現代の方が、ますます活字依存的になっていると言えるのかもしれません。
「小さい頃から活字に頼る」というこの傾向を上手く刺激してあげると、文字の学習に結びつくことも期待できます。小さなお子さんをお持ちのママであれば、やはり本の活字に興味を持ってもらいたいのではないでしょうか。読書の秋ならぬ、「読み聞かせの秋」で、ひらがなへの興味を促すのもいいかもしれません。
*出典:British Journal of Developmental Psychology (2014) 「To the letter: Early readers trust print-based over oral instructions to guide their actions.」