“鉄腕”という言葉は黒田にこそふさわしい
日本人メジャーのパイオニアである野茂英雄ですら、3年連続が最高だった連続2ケタ勝利。
「スプリット、ツーシーム系がよかった。それが一番だったと思う。(5年連続2ケタ勝利については)継続することがすごく大事だと思う。年齢に関係なく、日本人がこっち(米国)でできるというのは、自分自身で誇りに思える」
35歳から5年連続の2ケタ勝利。日本人メジャーのパイオニアである野茂英雄ですら、3年連続が最高だった。ドジャースでデビューした1995年から1997年の3年連続と2001年から2003年にかけての3年連続(ちなみに野茂は1999年を含めて日本人最高の計7度の2ケタ勝利を記録)だが、2度目の3年連続が32歳からだったことを考えると、黒田の35歳からというのは賞賛に値する。年齢が増すにも関わらず、毎年結果を残し続けることは至難の技であり、黒田は39歳になってもなおストイックに自分を追及し、対戦打者のデータを徹底的に収集して自分なりのノートを作って対策を練る準備を怠らない賜物だ。とくにここ2年間は1歳年上のチームメートに大きな刺激をもらっている。「ポジションは違うけど、イチローさんの日々の準備を見ていると、僕もまだまだやらないといけないと思う」。
イチローの言葉に「200%の準備をしなければ、120%の力を試合で発揮できない」というものがあるが、まさにその自己管理を含めた準備への姿勢が、黒田に好影響を与えている。
今季は開幕から調子が上がらず、地元メディアから年齢からくる衰えを指摘された。その理由は、昨シーズンを6連敗で終えたことに起因する。チームがプレーオフ争いを繰り広げている中、本来の投球ができなかった不甲斐なさを本人はもちろん忘れていない。「あの時期にチームに貢献できなかった悔しさはずっと持っている。その気持ちだけで結果は出ないけど、それが支えになっている」。その証拠として、昨年の6連敗は8月17日(同18日)から始まったが、今年は同じ8月17日(同18日)から4試合で3連勝。すべての試合でクオリティスタート(6回以上を自責3以内)を続けていることから黒田の思いが伝わってくる。それこそが「8月はとてもよかった。9月をうまく滑り出したし、この調子を継続してほしい」とジラルディ監督が期待するところだ。
今季は開幕で先発ローテ―ションに入っていた5人のうち、イバン・ノバ、CC・サバシア、マイケル・ピネタ、田中将大と次々と負傷で離脱した。ピネタは復帰したが、黒田1人だけが開幕から離脱することなくローテーションを守っている。安定度は群を抜き、「メジャー史上最高の日本人投手」と呼ぶ評論家も少なくない。
開幕前に今季の目標のひとつに掲げたのが、日米通算3000投球回。両球界の経験者では野茂しか達成していない偉業にあと5回2/3と迫った。“鉄腕”という言葉は黒田にこそふさわしい。