竪琴のラインを使ったリラの椅子
20世紀前半に建築界に革命を起こしたピエール・シャロー(1883~1950)を日本で初めて本格的に紹介する回顧展『建築家ピエール・シャローとガラスの家』。本展の監修者でパリ国立近代美術館主任学装員のオリヴィエ・サンカルブル氏の解説をもとに本展をご紹介した前編、お楽しみいただけたと思います。
前編同様、シャローの魅力的な家具の数々をグッとよったファニチャーイスト(家具大好き人間:イシカワ造語)目線でお伝えする後編、画像満載で綴ります!
さて、デスクの隣にある椅子:肘掛け椅子<SN37>(1923年)は、リラ(竪琴)をモチーフにしている。
この椅子は一見アールヌボー時代のモノなのか?と思った。と、いうのも隣のデスクに比べて曲線が多用されているからだ。
また、モチーフの竪琴のイメージが、曲線の装飾ラインを活かしてピッタリだったからだ。
楽器の竪琴のラインをアームから繋がる前脚に活かし、軽快で優雅な椅子が誕生した。
シャローの初期の椅子は前時代を踏襲した重々しいものが多いが、この頃から軽やかで、機能的なデザインを意識している事がわかる。個人的にはこれでも「重々しい椅子」だが。
隣に展示してあるのは、まさにアールデコスタイルの化粧台(1925-27年)。
この化粧台は、顧客ウルマン夫人の寝室のためにデザインした。直線が強調されとても簡素なフォルムだ。デスク幅いっぱいの横長ミラーと素材切り返しによるデスク中央部。
中央のカエデ材と周囲のマホガニー材のコントラストがとてもモダンな組合せだ。そしてエッジなど細部の意匠も細やかにデザインしている。
専用のスツール、光沢のあるサテンのような生地が上品さを醸し出している。