しなの鉄道の新しい観光列車「ろくもん」
観光列車「ろくもん」の名称は、沿線に位置する上田ゆかりの武将・真田氏の家紋六文銭に由来する。各種ロゴは家紋をデザインしたものであるし、車体の色は真田幸村の赤備えに由来した濃い赤を使っている。車両は、旧国鉄時代から用いられてきた近郊型電車115系3両編成で、元々は3扉セミクロスシート車だったが、車体真中のドアは埋められて影も形もなくなった。一部のドアは使用されず、車内も近郊型電車の面影はほとんど消えた。まさに水戸岡マジックによる大変身である。
「ろくもん」のユニークな車内
長野寄り先頭車は3号車。元近郊型車両らしく、デッキはなく両開きドアから車内に入ると、ドア脇のロングシートはソファと荷物置き場に変わっていた。この車両はレストランカーで、テーブル付きの向い合せシートで2人席が通路をはさんで両側にずらりと並ぶのだが、落ち着いて食事ができるように、仕切りがありコンパートメント(個室)風となっている。それもドアによる仕切りではなく、ふすまによる和風の個室であるところがユニークだ。言ってみれば料亭のような雰囲気。もっとも出てくる食事は和風ばかりではなく洋食も提供される。水戸岡デザイン車らしく「のれん」をくぐって2号車へ。こちらもレストランカーだが、3号車のような個室ではなく、カジュアルなカウンター席とペアで並んで着席するテーブル席(ブース席)だ。カウンター席は窓を向いて座り、ブース席はカウンター席に座っている人の背中を見る感じで、お互い目線が合うことはない。3号車寄りにはキッチンとサービスカウンターがあり、1号車寄りにはソファー席がある。
1号車はファミリーカー。すべてテーブル付きの座席なので食事もできるけれど、軽井沢を午前に発車する1号と長野発の2号では、食事なしの利用も可能な車両だ。小さな子供連れのファミリー層を想定して、車内の中ほどには木のプールや座りこんで絵本を読んだりできるスペースもある。向い合わせの2人席では、椅子の位置が微妙に窓側を向いていて、見知らぬ人が相席になったときでも正面向き合わせで気まずくならないような配慮がほどこされている。人間工学的な配置とも言える。車端にはフリースペースとしてのソファ席があり、気分転換にはもってこいだろう。