常に最先端であり続ける至高のメーカーが
まったく新しい分野へ参入するモデルを開発
『BMW』(ビーエムダブリュー)と聞けば、多くの方がドイツ製の高級車BMWを思い浮かべられることでしょう。このBMWがバイクを作っていることをご存知の方は意外に少なく、「え? ビーエムってバイクも作ってるの?」と驚かれることも。BMWという企業がこの世に登場したのは1917年、ドイツ・バイエルンにて。ふたつの会社が合併して『Bayerische Motoren Werke』(バイエルン電動機株式会社)と名乗ったことが始まりです。元々は航空機のエンジンを開発・製造する会社で、BMWのエンブレムは飛行機のプロペラをイメージしてデザインされたものだと言います(青と白のチェッカー柄であるバイエルン州の州旗をモチーフにしたという諸説も)。1923年(日本は大正12年)よりモーターサイクルの製造を手掛けるようになり、1945年の第二次世界大戦後、モーターサイクルの製造を中心とした事業へとシフトします。その後、自動車の製造も手がけるようになったことから、モーターサイクル事業部については『BMW Motorrad(モトラッド)』と呼ばれることに。そう、BMWバイクはクルマよりも長く深い歴史を持っているのです。
90年以上の歴史を持つBMWモトラッドですが、そのイメージを表現すると「常に最先端」であることです。写真にある最新モデル R 1200 GS は、ありとあらゆる最新技術が取り入れられたアドベンチャータイプのモーターサイクルで、どんな道でも走破してしまうBMWのフラッグシップモデルでもあります。他メーカーを先んじたアイディアを次々と採用してモーターサイクルの進化を促しつつも、ライディングプレジャーを忘れないモデル群は、常に他メーカーの目標として君臨しているのです。
そんなBMWモトラッドが、これまで無縁と思われてきた「バイクカスタム」の世界へと参入する意思を表明しました。それが今回紹介する R nineT (アール ナインティ)の発表です。バイクカスタムの世界における王者と言えば、ハーレーダビッドソンをおいて他にありません。国としてのカルチャーの違いからか、カスタムカルチャーを土台に存在価値を高めてきたハーレーと違い、BMWはモーターサイクルとしての究極の姿を追求してきたメーカー。ところが、この R nineT は“カスタムを楽しむためのバイク”として世に送り出されたのです。
あらゆるカテゴリーに対して
最先端であり続けようとする姿勢
実はこのR nineTに先んじて発表されたコンセプトバイクがありました。それがこの Concept Ninety。R nineT をベースに、ストリートレーサー(カフェレーサー)風にカスタムされたBMWモトラッドのコンセプトバイクで、手がけたのはアメリカの著名なカスタムビルダー、ローランド・サンズ。バイクカスタムとは無縁だったBMWモトラッドが、ハーレーのお膝元であるアメリカのカスタムビルダーにカスタムをオーダーしたというニュースは、大きな話題を呼びました。BMWモトラッドがバイクカスタムの世界へ参入しようという本気度合いは相当なものでした。それを感じ取ったのが2013年12月、独BMWモトラッドのデザイン部門の最高責任者オラ・ステネガルド氏がConcept Ninetyとともに来日を果たしたときのこと。彼が来日した目的は、世界屈指のカスタムショーとも言われるヨコハマ ホットロッド カスタムショーにConcept Ninetyを出展すること、そして希有な才能を持つ日本人カスタムビルダーにR nineTのカスタムを依頼することでした。現在、4名のカスタムビルダーがR nineTをフルカスタム中で、今年8月のBMWモトラッドジャパン主催のイベントでお披露目されるそうです。世界でも評価の高い日本のバイクカスタムカルチャーを取り入れようというBMWモトラッド、その動きに一切の妥協はありません。
「R nineTをフルカスタムすると、こうなる」という一例として登場したConcept Ninety。マッシブなボディに短い尾っぽのようなシート&フェンダー、前後17インチホイール、高性能なサスペンションにブレーキ、シャフトドライブなどなど……。モーターサイクルとしての性能を煮詰めつつもシンプルにまとめられたディテールは、現在ヨーロッパのカスタムシーンにおける流行とされる姿そのもの。現在各メーカーから出されているモデルで、ここまでカスタムベースとして吟味されたスタイリングのバイクはありません。ハーレーダビッドソンのモデルは111年という伝統ありきのヴィンテージスタイルを踏襲していますが、このR nineTは文字どおり世界の最先端。カスタムベースとなるモデルであっても、やはりBMWモトラッドは時代の先を見ているということなのでしょう。