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介護施設に入れない人52万人!介護需要の実態とは?

厚生労働省は3月に、特別養護老人ホームへの入所を希望しているのに入所できていない「待機者」と呼ばれるお年寄りが全国に約52万人いるとの集計結果を公表しました。これからさらに高齢化が進む日本。はたしてなぜ特別養護老人ホームへの入所が殺到しているのでしょうか?その実態に迫ります。

伊藤 亮太

執筆者:伊藤 亮太

株式・ファイナンシャルプランナーガイド

介護施設入所待ち52万人と聞いてあなたはどう考える?

介護施設

将来の不安に備え入所希望者増加へ

介護施設に入りたい人が52万人と聞いて皆さんはどのように受け止めるでしょうか?介護の深刻さを思い浮かべる方もいれば、介護施設不足を問題視される方もいらっしゃるかもしれません。

実はこの52万人という数字は、2013年度における特別養護老人ホーム(特養)に入所できていない高齢者の数を表しています。介護施設といえば、特養の他にも有料老人ホームなどもありますが、なぜ特別養護老人ホームへの入所が殺到しているのでしょうか?

特別養護老人ホームは安価で魅力

特別養護老人ホームは現在、全国におよそ7800ほど存在します。特養では、入所一時金などの初期費用は不要です。介護サービスとして、食事や入浴、排せつなどの生活援助を利用でき、日常生活のサポートを介護状態にもよりますが相部屋であれば月数万円~10数万円程度と、有料老人ホームよりも安価で受けられるため、入所希望の人が多いといえます。

また、いったん入所できれば、終身利用が可能ということもあり、要介護度合いが高い方、特に寝たきりの方にとっては終の棲家として利用できる、途中で出ていく必要がない点も魅力にうつるのかもしれません。

このような理由から、入所希望者が増加しています。2009年度には特養入所待ちの高齢者が42万1千人であり、その後自治体が入所者の枠を74800人分広げたにもかかわらず、今では52万人もの待機者に膨れ上がっているのです。

実は真に入所が必要な人は1割強というデータも

こうした数字を見ると、自治体はさらに特養を拡充すべきと短絡的に考えてしまいますが、その一方でこれらの待機者のうち、実は1割ほどの人のみが真に入所が必要な人だというデータ(特別養護老人ホームにおける入所申込の実態に関する調査研究)もあります。

仮に待機者の1割、つまり5万人ほどの人が真に入所が必要とされているならば、少なくともその人数に値する待機者の分は拡充が必要といえるでしょう。

一方、それ以外の方はなぜ入所を希望されているのでしょうか。実は今は自宅で生活できているが、将来が不安といった思いの方が入所を希望しているケースが多くあるのです。しかも入所可能となっても実際には入所しないケースもあり、将来の不安のための予備的な申し込みにより、待機者が殺到しているのも事実なのです。

厚生労働省では、保険財政に歯止めをかけるべく、特養への入所を「要介護3」以上に絞る介護保険法改正案を提出、2015年度施行を目指しています。保険財政という点からも入所希望者を絞ることは重要といえますが、その一方で、特養に入所できない方への対応(例:在宅介護の拡充など)も今後さらに重要視されるでしょう。

「特別養護老人ホームにおける待機者の実態に関する調査研究事業」によれば、施設入所検討時に特養以外の施設を検討したかという質問に対して、特養以外は検討していないと回答した家族が38.7%。もしかすると、施設入所を検討する時に、選択肢の幅が最初から絞られてしまっているのが現状なのです。

特養の入所枠の拡充・特養への入所の規制のほか、待機者の受け皿となる在宅介護の拡充、介護を考える時の選択肢自体の拡充を同時に行っていく、そして本当に希望する介護サービスを受けることができる状況へと変えていくことが求められているのかもしれません。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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