感染症

ぎょう虫症の症状・検査・治療

日本の寄生虫感染の中で、もっとも多い病気で、家族内で感染することが多い病気です。また、集団感染しますので、現在でもぎょう虫の検査が保育園・幼稚園・学校で行われていますが、最近は感染が減っています。このぎょう虫症について説明したいと思います。

清益 功浩

清益 功浩

医師 / 家庭の医学 ガイド

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外で多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

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2015年度をもって、学校での健康診断項目からぎょう虫検査が廃止されます。背景としては、衛生環境の改善でぎょう虫の虫卵の検出率が1%以下になっていることがあります。とはいえ全くないわけではないので、ぎょう虫症について知っておいた方が良いでしょう。

ぎょう虫症とは

睡眠

微笑ましい光景ですが、ぎょう虫症について言えば、家族で一緒に寝ていると、感染が広がります

ぎょう虫(Enterobius vermicularis 、pinworm または threadworm)という虫が、大腸や直腸に寄生することによって起こります。オスは2~5mm、メスは8~13mmの長さで、色は白く、丁度、白糸の切れ端のような感じです。

口からぎょう虫の虫卵が侵入して成虫になり、メスが産卵し始めるまでに約1ヵ月かかります。ぎょう虫のメスは肛門周囲に産卵し、虫卵は産卵されてから4~6時間で成熟、感染力も持ちます。この虫卵を口から飲み込むことで、胃内で孵化(ふか)して幼虫になり、小腸内に侵入します。そして小腸内で大きくなっていき、盲腸の近くで成虫になります。

成虫になれば、大腸や直腸に寄生します。寄生されたヒトを宿主と呼びますが、夜間宿主が寝ている間に、メスは肛門から体外に出て、肛門周囲の皮膚に産卵します。卵の周りには粘着性があるために、皮膚に付着します。ぎょう虫が動くこと、産卵すること、卵の付着などで、肛門の周囲の痒みが出てきます。その痒みのために手や指で掻いてしまい、手や指に虫卵が付着して、その手で食事をしたり、口に手や指を持っていくことで、再び感染してしまいます(自家感染)。成虫の寿命は約2ヵ月です。

虫卵は、衣類やベッド・カーテン・絨毯(じゅうたん)や他の物に付着しても2~3週間は生きています。そのため衣類やシーツ、タオルなどを介して、ヒトからヒトへ感染。保育園・幼稚園・学校などの集団感染、家族内感染が起こってしまいます。

ぎょう虫症の症状

ヒトの腸の中で寄生していますが、腹痛などの症状は少なく腸以外の他の臓器に感染することも少ないので、何の症状もないことが多いです。症状が有る場合は肛門周囲のかゆみ、掻くことによる炎症、夜間のかゆみのために睡眠不足になり、イライラや短気になることもあります。この肛門周囲のかゆみは主に、ぎょう虫が這いまわること、粘着性のある虫卵の刺激などで起こってきます。

次のページでぎょう虫症の診断、検査、治療、予防について説明します。


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