250ccのフラッグシップ WR250X
「ヤマハのフラッグシップ車両をぜひご堪能下さい」ヤマハの広報担当者にそう言われました。フラッグシップとは企業の商品やブランドの中で最上級の物をさすことが多いのですが、バイクの場合はラインナップの中でも一番ハイパワーな車両、もしくは大排気量のモデルをさすことがほとんどです。
これは大排気量車両の方が豪華な装備が装着されていることが多く、最上級の装備が施された車両と言えば、大排気量車両であるからといえます。しかし、WR250Xの装備を見てみると、メインフレームにはめちゃくちゃ硬くて軽い鍛造アルミ材、その他の部分には軽量な鋳造アルミを採用しています。
フロントフォークには伸び側・圧側両方の減衰力調整機構が可能なアジャスタブルタイプの倒立式フロントフォークを採用。
エンジンは国産トレール車両としては最高の31ps/10000rpmを出力し、圧縮比の高い高圧縮エンジンのため、燃料はハイオクが指定されています。250ccのトレール車両としては、オーバースペックとも思える装備はまさにフラッグシップの名に恥じません。
今回もWR250Xを一週間フルに通勤に使用して試乗インプレッションをお届けします。
WR250Xに装備される珠玉の単気筒エンジン
WR250Xには回転数が表示されるタコメーターが装備されていないために走行中に何回転エンジンが回っているのかわかりませんが、音のフィーリング的にかなり高回転の印象を受けます。
単気筒高回転型のエンジンユニットというと、ホンダのCBR250Rがありますが、CBR250Rと比べても、さらに高回転まで回っている感触があります。
また、アクセルを回すと同時に鋭いレスポンスでエンジンの回転が上がり、常に高回転なため、信号待ちでは頻繁に冷却ファンが回り、スーパースポーツバイクに乗っているかのように感じます。
31ps/10000rpmを出力する水冷4ストローク・単気筒DOHC4バルブエンジンは名機と言っても過言ではなく、WR250Xはこのエンジンユニットありきの車両であるといえます。
また、これだけの高スペックエンジンを搭載しながら、車重はたったの134kg。軽量でハイパワーであるため、実際の馬力以上に力強さを感じます。
ちなみに、重量を馬力で割って算出するパワーウエイトレシオの数値は、4.32kg/ps。同社のトレールバイク セロー250の場合は7.2kg/ps。単気筒エンジンを搭載するSR400の場合で6.6kg/psです。
足回りのセッティング調整であらゆる用途に使える
WR250Xに装備されている前後減衰の調整が可能なサスペンションは新車出荷時の上体でもバランスがとてもよく、加速時しっかりとリアのサスペンションが沈み込み、車体を地面に押さえつけます。
ハードなブレーキングから加速しながら旋回していく際にフロントのサスペンションがねばり、リアのサスペンションがしっかりと沈みながら旋回していくことができるためコーナリング性能も抜群です。
どんなマシンでも、加速の際はリアのサスペンションが沈みますが、ストロークが長くバネレートも柔らかいためWR250Xは特に感触がわかります。
アルミのフレームは軽量なのにしっかりと剛性があり、高速道路で100キロ前後で巡航している際にも、思っていたほど車体のブレはありませんでした。燃料タンク容量が7.6Lしかないので長距離のツーリングは厳しいですが、200km~300kmぐらいのツーリングであれば問題なくこなせそうです。
前後のブレーキは大径ウェーブディスクブレーキは軽量な車重もあいまってしっかりと効くので高速巡航時にも安心です。
通勤・ツーリングでマルチに活躍できる一台
しっかりとトルクがあり、高回転まで気持ちよく回るWR250Xのエンジンは高回転型とはいえ、街中でも扱いやすいエンジンです。シート高は少し高めの870mm。
身長165cmの私にとっては厳しいシート高なのですが、車重がとにかく軽いため、多少車両が傾いてしまったとしても、足で踏ん張ることが出来ます。立ちゴケのリスクもあまり感じませんでした。
前後調整の効くサスペンションはそのままでも乗りやすい足回りですが、減衰の調整を変更することで、自分にとって理想の乗り心地を実現することができます。ジムカーナや山道の走行などはもちろんのこと、町乗りでも足回りのセッティングは運転する印象が変わるのでぜひチャレンジして欲しいところです。
とにかくマルチに活躍することが出来る1台といえますが、あえてケチをつけるとすれば、シートはオフロードマシンらしく硬くクッションも薄いため、一週間毎日WR250Xで通勤しましたが、週の後半はシートの高さにはなれたものの、お尻の痛みが日に日に激しくなっていきました。
長距離のツーリングなども視野に入れるのであれば、ゲルザブなどのクッションをシートにつけた方が無難でしょう。
車両本体価格が75万3840円。250cc 単気筒のトレールマシンの常識を覆すような価格であり、非常に高価ですが、車体を構成しているパーツを見れば、一点一点妥協がなく、素晴らしいパーツで構成されています。1ランク上のマシン。それがヤマハの250ccフラッグシップマシンWR250Xです。
WR250Xちょっとカスタムするなら
WR250Xで長距離走るなら絶対に必須なのがシートにのせる「ゲルザブ」です。シートのあんこ(スポンジ)が薄いのでゲルザブなどでお尻をサポートしましょう。シートの高さがどうしても高いと感じるのであればローシートがお勧め。サスペンションなどを短くすると性能が変わってしまいますが、シートで車高を落とせばその心配はありません。
WR250Xのライディングフォームはオフロードバイクらしい直立姿勢になります。前からの風の影響を受けやすいので、ミニスクリーンで体にあたる風を軽減しツーリング仕様にするのもおすすめ!
WR250X関連動画
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