肝臓とアルコールの関係とは
肝臓はアルコールを解毒する働きがあります
- 糖・蛋白質・脂肪を体内で使える形にして貯蔵し、必要な時にエネルギーのもととして供給します
- 消化液である胆汁を生成・分泌します
- アルコールや老廃物などの有害な物質を無害な物質に変化させます
アルコールが肝障害を起こすメカニズム
化学工場である肝臓の能力がアセトアルデヒドを処理できる能力があれば問題ありません。しかし、大量のアルコールを処理する場合は、肝臓の仕事量をさらに増やさなければなりません。アセトアルデヒドの処理が不十分であると、生体内の蛋白質や脂質を変化させ肝臓を障害します。さらにアルコールは有害なフリーラジカル(活性酸素)の生成を促し、細胞を傷つけます。肝臓自体は再生能力の高い臓器です。たとえば、手術で3/4切除しても、元の大きさまで再生する能力があります。しかし、アルコールによる障害が長く続くと、ボディーブローのようにジワジワと効いてきます。脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変と不幸の階段を降りていきます。肝硬変まで行き着くと、さすがの肝臓も再生能力はなくなり元に戻ることはできません。黄疸や腹水、脳症などの症状が出現し、通常の日常生活を送ることが困難になります。
連日の過剰飲酒により一気に肝不全となります
重症型アルコール性肝炎とは
重症型アルコール性肝炎は、アルコール性肝炎が急激に悪化した場合に起こります。食欲不振や全身倦怠感などの症状と共に、黄疸や腹水を生じます。指標としては、劇症肝炎と同じように肝臓で生成されるプロトロンビンを用います。重症型アルコール性肝炎では、プロトロンビン時間が50%以下に低下します。重症型アルコール性肝炎は、脳症や肺炎、腎不全、消化管出血、エンドトキシン血症などの合併症を起こしやすく、多臓器不全を呈してくることが特徴的とされています。この病気になると1ヵ月以内に死亡することが多く、死亡率も高率です。最近の報告でも、救命率は30%程度とされています。
重症型アルコール性肝炎の原因
通常飲酒家がさらに過剰の飲酒を連日することが引き起こされます。重症型アルコール性肝炎は発症1ヵ月前の連日の過剰飲酒が特徴です。以前は男性の方がほとんどでしたが、近年は女性が急増しています。背景には、女性の社会進出に伴い女性一人当りの飲酒量が増加していること、女性は少量かつ短期間で肝障害を起こすことが挙げられます。女性が少量で肝障害を起こす理由としては、男性より体が小さいこと、アルコールを分解する酵素の性差、女性ホルモンの影響などが考えられています。最近の統計では、重症型アルコール性肝炎の30%は女性となっています。
重症型アルコール性肝炎の治療
アルコールは適度に楽しみましょう
アルコール性肝炎の治療は禁酒です。禁酒することが難しければ、最低でも休肝日を作りましょう。アルコールの適量には個人差がありますが、社団法人アルコール健康医学協会では、1日に約1~2単位のお酒を限度とするようにすすめています。1単位は、ビールであれば中ビン1本、日本酒なら1合、ワインなら1/4本ぐらいです。お酒に弱い人や女性は、この基準より控えめがいいでしょう。