歯科インプラント/歯科インプラントの施術方法・治療法

サイナスリフト…歯科インプラントを固定させる骨造成

歯科インプラントは、健全な歯槽骨に埋入することで失った歯根の代わりを務めるものです。なので、それを支える十分な骨量がなくてはいけません。では、骨量不足の場合どうしたらいいのでしょうか?上顎臼歯部の代表的な骨造成法であるサイナスリフトについて解説します。

梅田 和徳

執筆者:梅田 和徳

歯科医 / 歯科インプラントガイド

歯科インプラントを長期安定させるには、最低8ミリ、できたら10ミリ以上の長さのインプラントを入れたい。そうすると当然その長さのインプラントを支えるための歯槽骨が必要になりますが、それが不足することがあります。
特に上顎の奥歯を抜歯すると、上顎洞底は下に垂れ下がり、歯槽頂側(歯冠側)からも骨吸収します。元々この辺りの骨質は軟らかいことが多いので、インプラント治療としての難易度は高くなります。

そこでサイナスリフトという方法を取ります。サイナスリフトはその上顎洞底を挙上し行う骨造成法であり、インプラント治療における骨造成術としては代表的なものになります。

術式

サイナスリフト術後CT画像

サイナスリフト術後CT画像。1ミリほどしか無かった上顎洞底骨を約15ミリくらいに骨造成した。

上顎洞の中には上顎洞粘膜(シュナイダー膜ともいう)がありますので、それを破らないように注意して周囲から剥離していきます。剥離することによって出来た空洞に、他部位から採取した自家骨や様々な人工材料を充填し、約4~6か月ほど周囲の既存骨と一体化するのを待ちます。条件が良ければ同時にインプラントを埋入することもあります。

2つのアプローチ方法

1.頬側面に直径約15ミリの穴をあけて行う方法 ラテラルアプローチ
2.インプラント埋入する約4ミリの小さな穴から行う方法 バーティカルアプローチ

ラテラルアプローチのほうが大量に骨補填できますが、外科的なダメージが大きいので術後の腫れが大きくなります。骨吸収が大きく、大量に確実に行わなければならない場合はこちらを選択します。

バーティカルアプローチは術後の腫れは小さくていいですが、直視することができず盲目であるため、熟練したテクニックが必要とされます。また補填量はそんなに大きくはできません。従来は回転切削器具で骨削合しますが、最近では「ピエゾサージェリー」という超音波で骨削合する器材を使用することもあります。

ピエゾサージェリーは、選択的に骨削合できるので安全ですし、キャビテーション効果(冷却の為に噴霧されている生理食塩水による気泡の発生および気泡がはじけること)もあるので出血が少なく、炎症性細胞が少ないので術後の痛みや腫れも小さくなります。専用の剥離子で上顎洞粘膜を剥離する方法もありますが、振動で剥離する方法やエアーや水圧でスペースを作る方法もあります。また、患者の術中の痛みやストレスを軽減するために、静脈内鎮静法で行うのもいいと思います。

傷口も小さく簡単なストレスフリー手術でしか骨補填やインプラント埋入を行わない先生がいらっしゃいますが、多くの基本的な方法を経験し、条件が揃った場合にストレスフリーな低侵襲手術を行うというスタンスが重要だと思います。

基本的なスキルを身に着けてからの低侵襲手術なんだということを忘れてはいけません。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます