一度は追いついたコロンビア戦だったが…
決勝トーナメント進出がかかったコロンビア戦で、1対4の完敗を喫したサッカー日本代表。グループステージ最下位となった原因はどこにあったのか。
しかし結果は、1対4の惨敗である。
17分にPKで先制点を許した時点で、日本は3点を取らなければならなくなった。ベスト16入りのハードルはさらに高くなったが、岡崎慎司のヘディングシュートで前半終了間際に追いついた。コロンビアに傾いていた流れを、引き戻す一撃である。
同時刻にキックオフされたコートジボワール対ギリシャ戦は、ギリシャが1点リードでハーフタイムを迎えていた。この時点でギリシャが勝点4、コートジボワールが勝点3、日本が勝点2だが、日本が勝点でギリシャと並べば得失点差で2位に浮上する可能性が高い。ギリシャの予想外の健闘により、点差はともかく勝てばグループステージを突破できる可能性が生まれていた。
後半開始とともに、コロンビアが選手を交代してきた。前半は温存した司令塔のハメス・ロドリゲスを、送り込んできたのである。
流れが、変わった。日本は、耐えられなかった。
55分、ロドリゲスのラストパスから2点目を喫してしまう。5分後には内田篤人のパスから大久保嘉人が決定機をつかむが、至近距離からのシュートはバーを越えた。
ここから先は、悲劇だった。
攻撃に人数をかける日本の背後を、コロンビアは鋭いカウンターで狙ってくる。82分に致命的な3点目を喫すると、本田圭佑は膝に手をついた。どんな苦境でも前向きの姿勢を崩さなかった彼も、ついに反発心や闘志をなぎ倒されてしまった。後半終了間際にもゴールを許した日本は、ブラジルから姿を消すこととなってしまったのだった。
すべてがチグハグだった日本代表
敗因は複合的なものだ。まずは初戦の敗退である。敗戦、引き分け、敗戦という結果は、今回と同じ結果に終わった2006年のドイツ大会をなぞるものだ。第2戦と第3戦は、8年前とスコアも同じである。大会前から語られていたとおり、黒星スタートがその後の戦いを難しくしたのは間違いない。
ふたつ目はアルベルト・ザッケローニ監督の采配だ。「自分たちのサッカーで上位進出をめざす」という目標を掲げながら、これまでほとんど手をつけていないパワープレーを使ったり、前線の選手の配置を変えたりした。
選手に応用力がなかったという言い方もできるが、イタリア人指揮官の采配はブレを感じさせた。各国が真剣勝負を演じるW杯で、付け焼刃のような戦略が通用するはずはない。
戦略と関連して、選手選考にも触れなければならないだろう。ヘディングの強い選手を生かすパワープレーに活路を求めるなら、それにふさわしい選手を選ぶべきだ。だが、Jリーグで空中戦の強さを示している豊田陽平を、ザックは23人に加えなかった。
その一方で、メンバーに選びながら一度も使わなかった選手がいる。ドリブラーの斎藤学などは、起用すべきタイミングはあったが……。
結果的に、選ばれた選手とやっているサッカーの整合性がとれない時間が生まれてしまった。10人になった相手を崩し切れなかったギリシャ戦は、ちぐはぐさが際立ったゲームだった。
選手も不甲斐ない。3試合を通じて持ち味を発揮したのは、内田だけである。第2戦ではGK川島永嗣が素晴らしいセーブを見せ、コロンビア戦は岡崎が彼らしいゴールを奪ったが、そのふたりにしても力を出し切れていない。日本の強みだった香川真司と長友佑都の左サイドは機能せず、本田も本調子でなかった。
身体のキレをメンタルでカバーすることもできなかった。日本の選手が頑張っていなかった、とは言わない。だが、他チームのゲームを観ていると、物足りなさをぬぐえない。
目の前のボールを自分のものにしたい、相手より一歩先にボールに触りたい、といった熱量が、圧倒的に少なったと言わざるを得ないのである。あまりにも淡々と、日本はプレーしていた。
日本がコロンビアに惨敗した裏側では、ギリシャが劇的なゲームを演じていた。コートジボワールに一度は同点に追いつかれたものの、後半ロスタイムのPKで2対1の勝利をあげたのである。2試合終了時点で最下位だったギリシャは、日本の大敗にも助けられて2位に浮上したのだった。
日本が得意とするパスワークと、日本人が持つ俊敏さや勤勉さを武器として、このチームはブラジルW杯で戦うはずだった。だが、これまで見せてきたものを何ひとつ発揮することなく、グループステージは終わった。終わってしまった。
自分たちの持ち味を出し切れない厳しさが、W杯にはある。それは分かっている。
それでも、何とかして力を出し切ろうともがき、あがき、苦闘する姿を見ることはできなかった。1分2敗という結果以上に、戦う姿勢でも相手に負けてしまっていたことが、何よりも残念でならない。