相続・相続税/生前贈与・贈与税の基礎知識

生前贈与で相続対策は万全のつもりが…思わぬ落とし穴(2ページ目)

相続対策としてよく活用される「生前贈与」。しかし相続後、「過去の贈与が無効」だと税務署から指摘され、相続対策をしていないのと同じ結果になってしまうことがあります。贈与であるとしっかり説明できるよう対処しておくことが大切です。

小野 修

執筆者:小野 修

相続・相続税ガイド

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生前贈与でないと指摘されるのは、ほとんどが現金・預貯金

税務署が贈与と認めないケースの大半が現金・預貯金です。たとえば次のようなケースが挙げられます。

へそくり
指摘を最も受けやすいのが「へそくり」です。妻は夫からもらった生活費を節約して頑張って貯めています。妻も何の疑いもなく自分のものと思っています。ですが、税務署はもらったのではなく「預かっただけ」と判断します。夫も頑張ってくれた妻にはその分あげたいでしょうから、この場合はへそくりはいったん夫へ戻し、生活費とは別に現金を贈与しましょう。

●受贈者本人が自由に使えない
現金の贈与が認められるには、受贈者(財産をもらった人)が自由に使えることが必須です。銀行口座に毎年110万円入金していても、窓口に行くのは贈与者(財産をあげる人)で、通帳とハンコも贈与者が持っているのでは、贈与ではなくただの「名義預金」(実際は贈与者のもの)と指摘されます。受贈者自身が通帳とハンコを管理し、自分で預けに行きましょう。

成年になっても親が管理
受贈者である子が未成年の場合は、贈与者である親が銀行に入金に行ったり、通帳とハンコを管理していても良いとされています。しかし、子が20歳になったら通帳とハンコは引き渡し、次からの入金は子が自分で行くようにしましょう。そのまま親が管理していては、過去の分も含め全て名義預金と指摘されます。

未成年の口座を管理していても出金はNG
子が未成年のうちは親が口座を管理しても良いですが、一度でも親が引き出してしまってはダメです。「生活費に困り、一時的に親が引き出してその後に戻した」ということも聞きますが、これは「名義預金です」と言っているのと一緒です。

●子の口座のある金融機関が親の近所にしかない
例えば親の近所にある金融機関に子の口座があり、その口座に贈与していて、子は別居で近所にはその金融機関が無いといったケース。普段使わないような口座に子が自分で預けたとは説明しづらいものです。子が普段から使っている口座に預けること、移し替えることも重要です。

口座の名義変更をしていない
受贈者である子が婚姻等により姓が変わった場合は、すぐに名義変更をしましょう。旧姓のままの口座に贈与をし続けていては、子は実際に使ってないと考えられるため、これも名義預金と指摘されやすいのです。

生命保険にも落とし穴あり

相続対策によく用いられる生命保険。ここにも、意外な落とし穴があります。

子が契約者である保険の保険料を親が払っている
保険は税務上、契約者ではなく「保険料負担者のもの」と判断します。いくら子が契約者でも、親が直接保険料を支払っていては意味がありません。親は子に現金を贈与し、その現金で子が自分で保険料を払う、という流れにしておく必要があります。

保険そのものを贈与した
契約者を親から子へ変更したことで贈与した、と考える人は多いです。ですが税務上はあくまで保険料負担者のものですので、契約者を変更しただけでは贈与になりません。言い換えれば、保険契約そのものは贈与できないということになります。

せっかくの生前贈与が相続対策になっていなかったと、いうことでは、長年の苦労も報われません。贈与を説明できるか否かの判断は難しいため、専門家と相談しながら相続対策を進めてもらいたいものです。

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