急性膵炎とは消化酵素の暴走
急性膵炎とは、膵臓から出る消化酵素が暴走して、膵臓自身を自己消化してしまうものです
急性膵炎の起こるメカニズム
膵臓からは食べ物を溶かす消化酵素が出ています。この消化酵素、通常は膵臓内では働きません。膵臓から出た十二指腸で、食べ物に出会ったときに働くようになっています。膵臓から出た消化酵素は、前駆体というおとなしい状態で膵臓の管を通過します。そして消化管に出たところで活性化して、食物を溶かす働きが出るのです。万が一、膵臓内で活性化しても、膵分泌性トリプシンインヒビターという物質で消化酵素を抑え込むシステムが備わっています。
しかし、何らかの原因によりこのシステムが崩壊すると、膵酵素が膵臓内で活性化して膵臓自身を自己消化してしまいます。胆石が原因の場合は、胆管内を移動してきた胆石が、膵管と胆管の合流部で詰まることで、膵液の流れが妨げられることにより起こります。
アルコールの場合は、過剰摂取による胃液・膵液の分泌増加、膵管の出口のむくみで膵液の流れが滞ったり、アルコールそのものが膵臓を刺激することなどが原因と考えられています。アルコールが膵炎を起こす仕組みに関してはいろいろな説があり、はっきりとしたものはまだ明らかではありません。
急性膵炎を起こしやすくする遺伝子に関してはよくわかっていませんが、消化酵素であるトリプシンの遺伝子異常による膵炎が報告されています。他の原因の膵炎とは異なり、多くは20歳未満で発症します。
急性膵炎の原因
急性膵炎の原因NO.1はアルコールです!
急性膵炎の症状
激しい腹痛と共に、悪心や嘔吐を高率に認めます。前屈位で痛みが軽減されるので、お腹を丸めてうずくまる特徴的な体位をとることが多いです。膵臓は後腹膜といってお腹の後ろ側に位置しているので、背部にも痛みを伴います。急性膵炎の診断
腹痛、膵酵素の上昇、画像診断の3つを軸に判断します。- 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある。
- 血中または尿中に膵酵素(アミラーゼ・リパーゼなど)の上昇がある。
- 超音波、CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある。
急性膵炎の治療
急性膵炎と診断したら、原因検索と重症度判定を行います。胆石が原因の場合は、内視鏡などで胆道減圧処置を行い膵液の詰まりを解除します。急性膵炎の治療は、膵酵素の活性化を抑えるため蛋白分解酵素阻害薬を投与して、絶食、点滴を行います。急性膵炎は炎症が全身に及びやすく、ショックや腎不全、呼吸不全、敗血症など重篤な合併症が出現しやすいので注意が必要です。持続的血液ろ過透析や血管造影を用いた動注療法などの特殊な治療を行うこともあります。特に重症急性膵炎は致命率が高いため、専門医療施設での治療が必要です。