「体にいい」は本当か?

「体にいい」は本当か?

政府が決めた「食品の新たな機能性表示制度」。食品に含まれる成分がどのように体にいいかを企業がうたう行為は、たとえばアメリカではカプセルや錠剤といったサプリメント類に絞って許可されているが、野菜や果物のような生鮮品にまで適用されるのは異例だ。

「体にいい」に飛びつく日本人

「体にいい」というキーワードに日本人は弱い。バナナがダイエットにいいという話がテレビで紹介されると全国のスーパーでバナナが売り切れになり、納豆をかき混ぜて数分放置するとダイエット効果があると報じられると、普段食べない人までお店に殺到し、スーパーは大パニック。後者に関しては、やがてその情報がねつ造と判明し番組が打ち切りになるオチまでついた。

このように、日本人は「体にいい」という話になると、あたかも思考停止してしまったかのように鵜呑みにする傾向がある。そんなところに食品の機能性表示を拡大すれば、買い占めパニックを増やすだけではないかと心配になる。


「体にいい」はずのもので体調トラブルに

サプリメントも「体にいい」とされるものの一つだがぼくは懐疑的だ。なぜならぼく自身、サプリメントで体調のトラブルを経験したことがあるからだ。

数年前、体のあちこちの皮膚に赤い腫れのような症状が出た。中国から飛来する汚染物質が問題にもなっていたので、その影響かと思い皮膚科を受診した。

すると医師から「何か薬などを飲んでいませんか?」と質問された。何の薬も飲んでいないと答えると、「サプリメントは飲んでいませんか?」

当時ぼくはあるビタミンタブレットを飲んでいた。どの薬局にも売っているポピュラーなものだったが、医師からは服用をやめるよう言われた。


サプリメントの意外な落とし穴

理由は次の通り。サプリメントは特定の成分を強化しているので、場合によってはその成分を過剰摂取する危険性がある。特定のビタミンを過剰摂取すると人体に悪影響を及ぼす恐れがあることが知られている。

さらに、全く別の問題もある。サプリメントは複雑な製造工程を通るため、途中の段階で予期しない物質が混入することがある。一年に一回や二回しか食べないようなものなら摂取量は限られているが、毎日飲むサプリメントだと一回の分量は少なくても最終的に多くの量を体内に取り込むため、万が一の場合の影響が大きい。

症状の話に戻すと、サプリメントをやめたところ、何の治療もしないで約半月で症状は治った。これがサプリメントをやめたからなのか、もともとその程度で治るものだったのかはわからないが、サプリメントを飲むまではそんな症状が出なかったのも事実だし、やめて治ったことも事実だ。

こうしてぼくは、サプリメントで健康になろうなどという発想自体が間違っていたことに気づいた。


「体にいい」は本当か?

「体にいい」をうたい文句にしている食品に「トクホ(特定保健用食品)」がある。六号通り診療所所長の石原藤樹医師は、6月2日付の「日刊ゲンダイ」の紙面上で次のように警鐘を鳴らしている。

「『トクホ=健康にいい』というイメージは捨てて、ちょっと立ち止まって考え直したほうがいいと思います」

石原医師は「トクホ」の認定が薬のように厳格でない点と、発売後に健康被害が出ても見直す仕組がない点を問題視する。

その石原医師が例にあげたのは、脂肪を付きにくくするとして人気だった食用油「健康エコナ」に発ガン性物質が含まれていた問題だ(2009年に発売中止)。「健康エコナ」は発売当初から発ガン性が疑われていたが、政府は対応せず、メーカーが自主的に発売を中止するまで販売が続けられた。


危険性を疑われる商品がなぜ即座に販売中止にならない?

日本国内で過去に起きた公害や薬害を見ると、日本政府が被害の拡大防止に鈍感であることがわかる。日本政府は、被害との因果関係が完全に証明されるまで「疑わしきは罰せず」という態度をとっているのだ。

これは安全性管理における本質的な誤りだ。

「疑わしきは罰せず」とは、刑法における「えん罪を防ぐための概念」であり、被害を食い止めることが最も重要な公害や薬害において用いるべきではない

しかし政府の基本姿勢がそうである以上、自分が被害に遭わないためには自分で注意するしかないというのがぼくの考え。健康に対する考え方は人それぞれだが、トクホやサプリメントによって健康になろうという考えだけは捨てたほうがいいというのが、自らの体験から得られた結論だ。
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