キプロス相手苦戦は必然だった
FIFAランキング130位のキプロスに対し、1点のみという結果になった。しかし、それには理由があった。
埼玉スタジアムのピッチに立った選手たちは、当然のことながら疲労感を引きずっている。「そんなに身体は重くなくて、思った以上に動いた」と話したのは柿谷曜一朗(24歳・セレッソ大阪)だが、その彼にしてもトップコンディションではなかった。試合後のザックも、「合宿でフィジカルトレーニングをやっていたので、身体のキレを求めることはできなかった。身体が重かったので、頭がどう機能するかを見たかった」と話している。
選手のチェックという目的もあった。ケガから回復した内田篤人(26歳・シャルケ/ドイツ)、吉田麻也(25歳・サウサンプトン/イングランド)、長谷部誠(30歳・ニュルンベルク/ドイツ)は、それぞれ45分プレーした。サプライズ選出となった大久保嘉人(31歳・川崎フロンターレ)や、攻撃の有力なオプションとなる清武弘嗣(24歳・ニュルンベルク/ドイツ)も、後半途中から出場している。3月のニュージーランド戦となる一戦は、チーム戦術と個々のコンディションの確認が重要なテーマとなっていたのだ。
キプロスは弱小国ではない
この日対戦したキプロスは、最新のFIFAランキングが130位である。ブラジルW杯出場32か国のなかで、もっともランキングの低いオーストラリアでも59位だ。
そんな相手が、W杯へ向けた練習相手になるのか?
本当に仮想ギリシャ?
といった疑問が聞こえてきそうだ。
ブラジルW杯欧州予選で、キプロスはスイス、アイスランド、スロベニアなどのグループで最下位に終わっている。10試合でわずか1勝しかできず、4得点しかあげられなかった。
ただ、失点は15なのである。クリーンシートと呼ばれる無失点ゲームは3つあり、1試合の最多失点は「3」だ。しかも、このグループを首位で通過し、W杯でダークホースにあげられるスイス相手に、ホームで0対0、アウェイで0対1と接戦を演じている。
FIFAランキングが下位に低迷するのも、ポイントの高い公式戦で、欧州の強豪や中堅と対戦しているからに他ならない。ビッグクラブでプレーしている選手こそいないものの、守備力は一定水準のレベルにあると考えていい。18本のシュートで1点に終わったのは、日本の拙攻だけが理由ではなかっただろう。
ピークはもう少しあとでいい
ザック率いるチームは、5月29日に直前キャンプ地のアメリカへ向かう。現地では6月2日にコスタリカと、同6日にザンビアとテストマッチを行なう。
ここでのチェックポイントは、これまで先発を担ってきた内田、吉田、長谷部のさらなるコンディション確認だ。出場時間を伸ばしていくなかで、W杯に耐え得る状態にあるのかを、ザックは見定めるだろう。並行して、彼らとポジションが重なる選手もチェックしていくはずだ。
大久保が新風を吹き込む攻撃陣とは対照的に、守備陣は気がかりだ。とりわけ、センターバックである。ザック就任とともに吉田と不動のコンビを組んできた今野泰幸(31歳・ガンバ大阪)が、キプロス戦ではいまひとつ精彩を欠いた。所属クラブで感じさせる迷いが、そのまま代表へ持ち込まれている印象だ。
親善試合のキプロス戦は、最大6人まで選手を交代することができた。しかし、W杯は3人までである。交代のカードは中盤から前線へあてられるのが通常で、守備の要となるセンターバックはフル出場が前提だ。
3番手と見られてきた森重真人(27歳・FC東京)が存在感を強めているが、センターバックは累積警告による出場停止のリスクが付きまとう。今野と吉田の完全復活は、W杯へ臨むチームの重要課題である。