雑貨/生活雑貨・デザイン雑貨

鈴木マサル傘展 持ち歩くテキスタイル

テキスタイルデザイナーとして、マリメッコを始め世界で活躍する鈴木マサル氏の展示が青山スパイラルガーデンにて行われました。テキスタイルの魅力を存分に感じさせる、迫力の展示の様子をレポートします。この後、全国各地を巡回します。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

 「鈴木マサル傘展 持ち歩くテキスタイル」が2014年5月8日~18日、青山スパイラルガーデンにて開催されました(現在は終了しています)。鈴木マサル氏とは、今最も注目されていると言ってもいいテキスタイルデザイナー。自身のブランド「OTTAIPNU(オッタイピイヌ)」やフィンランドのテキスタイルブランド「マリメッコ」、また今年新たに発表したムーミンのシリーズなど、国内外の様々な企業やブランドで活躍しています。大らかな自然の動植物を主なモチーフとし、大胆でカラフルな色彩と構図、色を重ね合わせることによる奥行きを持った質感、どこかユーモラスで気持ちを温かくするデザインが特長です。

これだけ並ぶと壮観です。

これだけ並ぶと壮観です。


今回展示会場に行ってみてまず驚いたのは、広いホールの頭上一面を賑やかに彩る、カラフルな傘たち。色とりどりの溢れる色彩パワーに、思わず「わあー!」と叫ばずにはいられません。傘というよりも、たくさんの絵を組み合せた、巨大立体オブジェのような見応え。傘単体としても色や柄を十分に楽しめるのですが、それらが集合することによって、一つの大きなアートとも捉えることができ、また違った景色が見えてくるのです。首が痛くなりそうなくらい、まじまじと上を見上げては、あの柄がどうこう、と会話を楽しむ人々が多く見受けられました。近くに寄ったり、遠くに離れて見たり、上から見たり下から見たり、と様々な見方によって、より楽しみ方が広がっていきます。

上から眺めるとこんな感じ。

上から眺めるとこんな感じ。


壁に展示された傘は自由に手に取ることができます。

壁に展示された傘は自由に手に取ることができます。


しかしこれらは決してオブジェではなく、実際に使える傘。会場を訪ねた人は、傘を手に取って気軽に使い心地を確かめ、気に入ったなら購入することもできるというところが嬉しい。今回の展示作品は90種類以上、実際購入できるものは87種類もありました。壁一面にずらりと並んだ傘を一つ一つ手に取り、開いたり閉めたり、柄を間近で改めて眺めたり、自分の服と合わせてみたりして、みんなそれぞれに楽しんでいます。テキスタイルとして、また1枚の絵としても大いに見応えあるというのに、傘という商品になることで、ただ飾っておくものではなく、身近なアートとして日常に溶け込み、自分のファッションの一部として新たな楽しみを生み出せるという、テキスタイルの持つ魅力を最大限に味わえるプロダクトになっています。実際手に持って使うことで、テキスタイルアートに対する親近感が湧き、無意識にテキスタイルとコミュニケーションしているような楽しさを感じさせました。傘を使うのは雨の日ですが、雨が降らないかな~、と心待ちにしてしまうような、広げたくてウズウズしてしまうような、この傘には、そんな風に気持ちをウキウキと高揚させる力があるように思います。(ちなみに日傘もあります!)

カフェのテーブルクロスにも使用。

カフェのテーブルクロスにも使用。

鈴木氏のデザインを映像化。人が影絵で入り込めるのも楽しい。

鈴木氏のデザインを映像化。人が影絵で入り込めるのも楽しい。


心がぐっと引き込まれるような会場構成は、設計事務所ima(イマ) の小林恭、マナ夫妻によるもの。インテリア、プロダクト、住宅建築等も手掛け、幅広い分野で活躍しているデザイナーです。「マリメッコ」の各店舗デザインや、昨年は太宰府天満宮でのマリメッコの展示でも注目を浴びました。今回の展示では、傘と一緒に鈴木氏がこれまでに手掛けたテキスタイルを何枚も天井から大胆に吊るしたり、ビジュアルデザインスタジオwowによる大スクリーンでの映像を設置したり、スパイラルが営業するカフェのテーブルクロスも全て鈴木氏のテキスタイルでコーディネートしたり、となかなか大掛かりでした(大変だった展示準備については、鈴木氏のブログにも様子が書かれています)。テキスタイルの柄一つ一つも、imaの二人が全て丁寧に選んで決めたのだそうです。

2005年に発表した、一番初期の作品。

2005年に発表した、一番初期の作品。


鈴木氏のトーク。「色を重ね合わせたところがどんな色になるか分からないことが楽しい」とのこと。

鈴木氏のトーク。「色を重ね合わせたところがどんな色になるか分からないことが楽しい」


鈴木氏のギャラリーツアーにも参加してみました。ご本人は毎日会場に立ち、お客さんと接し、お会計までこなしているそうです。自身の思い入れや制作にまつわる裏話などを、作品を前に気さくに語って下さいました。鈴木氏曰く、自分はローテクな人間とのことで、デザインするにはまず、絵の具を使って自分の手で描いているそうです。筆に絵の具をたっぷり付け、ポテッと液体を落とすように描いてマテリアル感を出したり、例えばインコなど動物を描く時、わざと実物の写真などを見ずに記憶だけで描くことで、空想から生まれる不思議な味わいを醸し出したり、所々色を重ねることで、重なった部分の色が変化していく様子の面白さを引き出したり、と鈴木氏らしいユニークな手法に興味が惹かれました。そして鈴木氏の言葉の端々から、テキスタイルへのほとばしる情熱が感じられました。

日傘シリーズ。これらは刺繍が施されています。

日傘シリーズ。刺繍で図柄を表現。


こちらの日傘は刺繍が施されています。布の状態ではなく、傘の形になってから、全体を刺繍しているそうです。製造は中国ですが、このような繊細な刺繍をできる職人が現在1人しかおらず、ほぼ全てその本人が1人で請け負っているのだそうです。かなり細かく手間のかかる仕事ですが、下絵通りに間違いなくきっちり仕上げてくれるそうで、丸や点の部分までいい加減には描けないとおっしゃっていました。傘ひとつにこれだけの手仕事が施されているとは本当に驚きです。この日傘、やはり人気が高く、売り切れもちらほら。

日傘。生地いっぱいに1枚の絵が刺繍されています。

日傘。生地いっぱいに1枚の絵が刺繍されています。


日傘の刺繍のための下絵。「正確に刺繍してくれるので気が抜けない」

日傘の刺繍のための下絵。「正確に刺繍してくれるので気が抜けない」


写真を撮りそびれましたが、今回の新作には折りたたみ傘もありました。デザインはもちろんですが、機能性にも着目し、薄い生地を使い、軽くコンパクトな傘として仕上げています。生地が薄いことによって、テキスタイルの染料が裏まで染み込み、表裏なく図案を見られることが気に入っている、と鈴木氏。値段もリーズナブルで、柄や色のバリエーションがあり、鮮やかな色彩とユーモラスなデザインを、傘をさした人間も内側から楽しむことができる、こんなワクワク感のある折りたたみ傘に出会うことはなかなかありません。

スパイラルでの展示は終了してしまいましたが、この後、傘展は全国を巡回。また傘の販売は一部デパートでも取り扱いがあります。以下今後の巡回スケジュールです。ぜひお出かけ下さい。

5月27日(火)-6月15日(日) 高知 アトラクト
5月27日(火)-6月8日(日) 倉敷 林源十郎商店
5月31日(土)-6月8日(日) 福岡 ル・キャド
6月12日(木)-6月30日(月) 富山 チリングスタイル
6月20日(金)-6月29日(日) 山口 円座(083-972-4555)


OTTAIPNU
鈴木マサルブログ「テキスタイル獣道」


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