鰻好きで知られる斎藤茂吉
大正から昭和初期アララギ派を代表する歌人だった斎藤茂吉は、医師であり鰻好きとしても知られている。斎藤茂吉の日記に、鰻を食べたという記述が出てくる。たとえば「午前中原稿があまり進まなかったが、昼食にうなぎを食べた。午後になっていくらか原稿がすすみ夕食にまたうなぎを食べた。そうしたら夜にはかなり原稿がすすんだ」というような日記だ。そして「茂吉と鰻」(林谷広著)では、斎藤茂吉の日記から鰻を食べた回数を調べていて、その数902回となっている。さらに戦中の物資不足の時には、鰻の缶詰を買い込んで、少しずつ食べていたという、現在ではほとんど目にしない鰻の缶詰だが、当時は明治屋や浜名湖食品などで販売されていた。昭和11年(1936年)「暁紅」からの作品でこんな歌を詠んでいる。「あたたかき鰻を食ひてかへりくる道玄坂に月おし照れり」斎藤茂吉が贔屓にしていたと言われる、昭和初期の創業の渋谷道玄坂花菱だ。ジャズが静かに流れる和風モダンな店内
道玄坂花菱へ向かう、渋谷駅ハチ公前から道玄坂を歩くこと3分ほどで、平成元年に新築したという花菱に到着。入口はビルのちょっと奥になるが大きな看板もあり分かりやすい。1階にはテーブルが2卓ほどあるが、地下1階にはテーブル席や座敷席もありこちらがメインの客席となる。ジャズが静かに流れる和風モダンの店内、ビールと肝焼きで一杯やりたいところだが、肝焼きはすでに売り切れとのことで残念。そこでヒレ焼き(写真左)、かぶと焼(写真右)をお願いする。ビールと鰻の串もので一杯、幸せな時間だ。ヒレ焼きは柔らかく甘辛ジューシーな食感、かぶと焼きは砕ける骨感、濃いめのタレが合う。お食事メニューは花鰻重1800円より。うな重小2700円、中3300円、大4300円、グレードで鰻の大きさが違うとのこと。静岡県大井川のブランド共水うなぎを取り扱っており共水鰻重は5200円。他にはうなぎまぶし、うなぎ雑炊、うまき、うざくがある。また、焼き鳥やイカ焼き・お刺身など一品料理も揃っている。醤油がきめ手のコクのあるタレ
待つこと30分ほどでうな重登場。皮はやや厚め、皮下の脂もノリがよくボリューム感がある。身は厚めでフワッとトロける身だ。タレは程よい甘辛、やや甘くコクのあるタレだ。ボリューム感のあるうなぎにはやや甘めのコクのあるタレが合うようだ。ご飯の炊き加減もややかためで、蒲焼とタレとのバランスもよい。花菱の創業者は岐阜の出身なのだそうだ、1階席に置いてあった、岐阜の宮内庁御用達の関ヶ原たまり醤油をみて納得だ。この醤油の旨味はすごい、これがタレにコクをだすようだ。斎藤茂吉が食していた当時は、まだ共水うなぎはなかった。うな重の並みか中を食したそうだが、それでも、旨味とボリュームのあるうな重で筆をすすめたのだろうと想像する。■花菱
住所:東京都渋谷区道玄坂2-16-7
電話番号:03-3461-2622
営業時間:11:30~14:30 17:00~22:00(L.O.21:30)日曜日定休
地図:Yahoo!地図情報