フォークって、カトラリーの中でも完成までに一番試行錯誤した道具ではないかと思うのです。歴史を辿っても、一番遅くに出来上がったカトラリー。肉を切るためのナイフ、液体をすくうスプーンに比べたら、食事をする上ではあまり切羽詰まっていないというか、必要性の順位が低い。

元々ヨーロッパは手づかみで料理を食べ、カトラリーを使った食事の形式がきちんと確立されたのは19世紀頃とも言われているそうです。結構最近の話です。そしてフォークの先が4本の基本形になったのは、実はスパゲッティ大好きなナポリの王様が、毎日スパゲッティをきれいに上品に食べるために考案された、という話もあるそうで、なかなか愉快なフォーク誕生のエピソードです。食材を刺すためというよりも、絡めるためだったんですね。

ヨーロッパの蚤の市などでフォークを物色していると、昔のものは歯が2本だったり、はたまた逆に5本も6本も無駄に多いものがあったりして、色々と考えた末のあの形なんだなあ、などとその歴史をちょっぴり窺い知ることができて面白いです。

アジアのお箸はもっと歴史が古いようですが、こんなに簡単で万能な道具もないわけで、すぐに完成形となってしまったのでしょう。試行錯誤や進化という意味では、フォークのほうがこねくり回し甲斐があるのでしょうね。

さて、改めてフォークを見つめ直して見ると、自分にとって一番しっくりくる万能フォークというのは、未だ見つかっていないようにも思います。刺す、絡める、すくう、乗せる、など、いざ使うとなると、フォークには様々な要素があります。どの動きもパーフェクトで、と考えるとなかなか難しいのですが、実際に使っている様々なフォークを並べて、どんな使い心地だったかな?ともう一度考えてみました。

作家の手仕事のフォーク

作家もののフォーク

作家もののフォーク


こちらは全て作家ものです。同じフォークというツールでも風貌が全く異なっていて、並べてみるとなかなか面白い。

真ん中のものだけは半分プロダクト的で、デザイナー・猿山修さんがデザインし、新潟・燕の金属加工会社・田三金属がベースの加工を行い、さらに金工作家・竹俣勇壱さんが仕上げに手を加えているというなかなか凝った作り。均一な形でありながら手仕事的な質感を併せ持つ、不思議な表情のフォークです。シャープで繊細、大きさも小ぶり。

元々猿山さん自身が家で使っていた、ヨーロッパの古いサラダフォークがデザインアイデアのベースとなっているそうです。確かに、この小ぶりさ加減が、普段は箸で何でも器用に食べてしまう、和洋ごちゃ混ぜに料理が並ぶ日本人の食卓にとっては、小回りが効いていて使い勝手がよい。角の部分などもキリッとエッジが効いているので、女性にはもしかしたらもう少し柔らかい丸みのあるものが好まれるかもしれませんが(持った時に角を感じます)、これがあると食卓の風景がピシッと締まる感じがします。

上のフォークは木工作家・須田二郎さんの作。大ぶりの無垢の木の椀や皿などを多く作る作家さんで、常に森のことを考え、材料は全て森の障害木や立て壊す家の柱など、木を無駄なく活用することに務めています。フォークなどのカトラリーは個展でもあまり数が出なかったりするため、人気があってすぐになくなってしまいます。

フォークを作るのは難しい、と以前須田さんも話されており、こちらはパスタを上手に絡めとるために考案された形だそうです。溝が細長く多少厚みがあるため、洗うのにちょっとやりにくいところがありますが、木の枝のように自然にすっと伸びた形には安定感があり、パスタをしっかり絡めやすい。手の握り心地もよいです。

木という素材があたりを柔らかくしているように思います。手作りの陶器や繊細な磁器、ガラスなど傷が心配な器には、こういった木のカトラリーは安心感があります。

一番下は金工作家・坂野友紀さんの作品。かなり初期の頃のものです。もう7、8年前くらい?当時はこういった作家の手作り品にあまり馴染みがなかったため、このプリミティブなデザインに新鮮さを感じました。どこか笑っているようなトボケた風貌で、女性作家らしい優しさがあります。これがあると食卓がほのぼのとリズミカルになる感じがします。

アンティークのフォーク

アンティークのフォーク

アンティークのフォーク


こちらは全てヨーロッパのアンティークのフォークです。フォークのルーツはやはりヨーロッパ。ということで、定番の理想型はここにあるのでは、と蚤の市や古道具屋などを漁って探してきたものです。特に”普通”と思われるものを並べました。

フォルムの美しさに惹かれて購入することも多いですが、いざ、家に持ち帰って他のカトラリーと比較してみると、実際はとにかく大き過ぎることが多い。サーヴ用か?と思うほど大きいこともある。すうっとある程度長さのあるフォークの歯は見た目のバランス的にはエレガントで美しいのですが、日本の食卓での使い勝手はどうなのでしょう。

一番左はトータル21cmくらいで、テーブルに置くとなかなかの存在感があります。一般的な箸の長さより短いはずなんですが、日本人(特に女性)には、ちょっと持て余してしまう感じ。それなりに重さもあるので、ずっと使っていると疲れます。

そして右端が日本で使うには一番実用的な大きさと感じるもので(17cm弱)、上述の猿山さんデザインのフォークと同じくらいのサイズ。お値段的にも一番安かったのですが、このくらいの大きさが結局ちょうど良く、使う頻度が高いです。これだ!というほど確信的ではないですが、シンプルでなんの変哲もない感じが気に入っており、ほどほどに使いやすいといった感じです。(boilという新宿三丁目の古道具屋さんには、使いやすそうなカトラリーがよく並んでいます。)

その他の小さなフォーク

フランスの小さなフォーク

フランスの小さなフォーク


果物やお菓子、またはオリーブなどの前菜用?と考えられる小ぶりのフォークです。こちらもアンティークで、フランス・ヴァンヴの蚤の市で見つけました。年代は不明ですが、それほど古くはないかもしれません。

ざっくりと素っ気ない工業的な造りですが、これらが思った以上に使いやすい。飲食店などのために、機能優先で造られたものかもしれません。2本の歯のものは、まさにリンゴやナシ用のイメージです。持ち手の丁度いい長さと細さ、食品をサクッとしっかり掴まえる感じが気持ち良い。無駄な装飾がないのもいい。もう少し本数が欲しいくらいですが、古いものはそう簡単には見つからないのが惜しいところです。

タイの小さなフォーク

タイの小さなフォーク


こちらは同じような2本歯のタイのステンレスフォークです。具体的な場所はもう忘れましたが、やはり市場のようなところに売っていました。かなりチープに造られています。型で抜いただけ、という感じ。縁の処理もなく、相当大雑把な造り。

しかしレトロな風情の南国フルーツ模様の台紙に妙な味があって、このままの状態で保管しています。使い勝手は大して良くはありませんが。旅の思い出というのは、使い勝手に関係なく愛着を感じるものです。アジアの猥雑でノスタルジックな雰囲気を味わうためのお楽しみ的ツールだと思います。

真鍮のデザートフォーク

真鍮のデザートフォーク


最後にもうひとつ作家もの。金工作家・鎌田菜穂さんのフォークです。こちらも小ぶりなデザート用。真鍮でできており、やや柔らかいのであまり強く力を入れると曲がってしまうかなというくらい繊細ですが、研ぎ澄まされたフォルム、優しく穏やかな表情に心惹かれます。テーブルが静謐な雰囲気になります。女性ならば、手を美しくみせてくれるように思います。

ジャスパー・モリソンやカイ・ボイスン、柳宗理など、デザイナーのプロダクトカトラリーは、もちろん良いものだと思いますが、使っている方がたくさんいるかと思われるので、ここでは言及しませんでした。たぶん自分は、使い勝手をそこそこ考えつつも、そのフォークが持つ背景や自分との出会いの印象、作り手との関係性などで選び、使っていると、書いていて気付きました。

たかがフォーク、されどフォーク。いやフォークに限らず、食卓の道具全般にいえることかもしれません。長々と書いた割には、あまり参考にならない考察になってしまいましたが、自分の中では腑に落ちてしまったので、やや無責任ながらもここで終わることにします。

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