収入が増えない!40代と50代が雇用延長の割りを食う?
第一生命経済研究所 首席エコノミスト熊野英生さん
熊野 20~30代は収入、消費ともに増えています。アベノミクスでの恩恵もあり、特に目立つのは、シニア世代の消費の伸び。ただし、40~50代は厳しい状況です。賃金は横ばい以下で、消費も冷え込んでいます。その理由は、65歳まで雇用が伸びているため。2013年の調査によると、本来、収穫を得られるはずの40代50代が雇用延長の影響を受けて、収入が増えにくくなっているというデータが出ています。高齢者雇用を守ろうとすると、どうしても賃金の高い40代50代がしわ寄せを食らってしまうのでしょう。(図表を参照)
――お金の使い方もそうですが、価値観も見直す必要がありそうですね。
熊野 そうですね。たとえ収入が減っても、やりがいのある仕事をすることでモチベーションを保つといった発想の転換も必要だと思います。また、50~60代が若い世代に比べて圧倒的に有利なのは、人的ネットワークがあることです。人という最大の資源を活用して、仕事に繋げるといった姿勢も大切ではないでしょうか。逆にいうと、40代以降になって、社外に人的ネットワークがないのは危ない。できれば20~30代のうちに勉強会や趣味の会など、何かしら自分で人脈を作るようにしたほうがいいと思います。
消費税増税+インフレ分を、収入アップで取り戻すのは無理!
――増税に加えて、モノの値段が上がり、ますます家計を圧迫しています。このままインフレが進むのでしょうか?熊野 前年比1%ぐらいの物価上昇はしばらく続きそうです。なかでも、食料品やエネルギーといった必需品が上がっていますから、節約は必須でしょうね。これまでよりも“やりくり力”を磨く必要があると思います。円安が進むと、携帯電話やパソコンなど、2000年代台で一度も上がったことのないモノの価格までぐんぐん上がる可能性も強い。
――その分は、収入アップでまかなえないのですか?
熊野 消費増税分とインフレ分を、収入アップだけで取り戻すのは正直難しいと思います。今年はベースアップしたけれど、来年からは未知数です。今年上がったのは、主に円安によるところが大きかった。やはり家計のやりくりを見直しは必要です。
――家計のコストカットをするために、何かいい節約法があれば教えてください。
熊野 食料品などの生活必需品を削るのは、なかなか難しいものです。そうなると、外食や衣料、レジャー、教養・娯楽といった余暇の“選択的消費”から節約を強いられることになるでしょうね。ただし、家族構成やライフスタイルによって、各家庭にとって支出が多い時期は多少違うと思います。365日、常に節約するというよりも、季節的に支出が増えやすい時期に集中してやりくりを工夫するという方法もありますよ。これを機に、各家庭で必要なものとそうでないものを話しあってみてはどうでしょうか。
教えてくれたのは……
熊野 英生(くまのひでお)さん
第一生命経済研究所 首席エコノミスト。専門は、金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。日本銀行を経て第一生命経済研究所へ入社。著書に『3時間でつかむ金融の基礎知識』や『バブルは別の顔をしてやってくる』など。
取材・文/西尾英子 パネルデザイン/引間良基