ここへ来て、改めて高まってきたイチローの評価
イチローをトレードに出さない理由。それは試合に対する心構えにあるようだ。
基本的にはトレードの“デッドライン”とされる7月31日(その日までにトレードが完了すると移籍先でもポストシーズン出場が可能となるから)までは、本当に何が起こるかわからいのだ。
今、その渦中にいるのが、ヤンキースのイチロー外野手(40)である。ヤ軍は昨年オフ、カージナルスからFAとなっていた通算358本塁打の強打者カルロス・ベルトラン外野手(36)を3年総額4500万ドル(約45億円)で獲得。さらにレッドソックスからFAとなっていたジャコビー・エルズベリー外野手(30)と7年総額1億5300万ドル(約153億円)で契約した。
ガードナー、ソリアーノと合わせるとヤ軍の外野手は5人。ジラルディ監督、キャッシュマンGMの外野手構想では、イチローは“5番手”になってしまっていた。
そこで浮上したのがトレード話で、ジャイアンツ、レッズの名前が挙がった。キャンプに入ってからは、フィリーズのマイク・アダムス投手とのトレードがまことしやかに囁かれ、タイガーズも獲得に名乗りを挙げるのでは、といわれている。
ところがここへ来て、イチローの評価が高まっている。「移籍させるべきではない」の声が高まっていると言った方がいいかもしれない。問題はエルズベリーのコンディションだ。3月17日のパイレーツ戦の遠征メンバーから外れるなど、万全な状態ではないエルズベリーは、2010年は脇腹痛で18試合しか出られず、2012年は右肩痛で74試合出場にとどまった。昨季は134試合に出場しているものの、プレーオフ進出をかけた9月に16試合欠場している。
故障がちのエルズベリーに比べて、イチローは元気である。「200%の準備」をモットーとするだけに、体調の管理は万全で、とても40歳とは思えない肉体もキープしている。162試合のレギュラーシーズンを勝ち抜くだけでなく、プレーオフ進出、世界一奪回というのが課せられた使命であるヤ軍にとって、打撃面、守備面はもちろん、イチローの試合に対する心構えは必要不可欠なのだ。おいそれとトレードに出せない理由がそこにある。
メジャーリーグでは、何が起こるかわからない。突然、トレードは成立する。選手にとって“試合に出る”ことが第一であることを考えれば、今年のイチローは、残留がいいのか、移籍がいいのか。もちろん、ヤ軍でレギュラーを獲得し、毎試合出場できることが最良であることに間違いはないのだが。