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マレーシア航空機消息不明事件における政府対応の謎

マレーシア航空機の消息不明事件。当初は事故とされたが、ハイジャックによるものであることが明らかになりつつある。しかもその犯人が機長自身である疑いも強まっている。しかしマレーシア政府は、当初からその可能性を知りながら、情報を小出しにしていた可能性が感じられる。なぜそんなことをするのか? 福島第一原発事故の際、日本政府がとった対応とよく似た点が浮かびあがってくる。マレーシア政府は何を守ろうとしたのか。

松井 政就

執筆者:松井 政就

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マレーシア政府はなぜ情報を小出しにするのか?

マレーシア航空機が姿を消してから一週間以上が経過した。

各国から軍隊なども派遣され、懸命な捜索が行われているにもかかわらず、有力な手がかりはつかめていない。


マレーシア政府の姿勢は「あの日」の日本政府とそっくり

事件に対して意見を言うのは、全てが明らかになってからがいいのだが、あえて言うのは、マレーシア政府の発表を見て、ある「既視感」をもったからだ。

それは東日本大震災の最中に発生した福島第一原発の爆発事故における日本政府の会見だ。

東日本大震災が発生した時、ぼくはシンガポールにいた。震災発生の翌日、シンガポールの秋葉原と呼ばれる市内の家電量販店を取材中、ズラリと並ぶ大型テレビに「福島原発メルトダウン」というテロップが一斉に走った。それを見た人々が「日本はどうなってしまうのか」と心配そうに声をかけてきた。


発表を遅らせ情報を小出しにする政府

ホテルに引き返しテレビをつけると、現地の局をはじめ、外資系の局にも専門家が出演し、原子炉の性能など科学的な根拠を示しながら、メルトダウンが起きていると明言していた。

ところがネット経由で同時に見ていた日本政府の会見はメルトダウンを否定していた。当事国である日本政府の主張だけが他国と異なり、発表は遅れ、情報は小出しにされた。

現在では日本中の誰もが、あの時の日本政府の発表が真実ではなかったことを知っている。

今回のマレーシア政府の姿勢はあの時の日本政府とそっくりなのだ。しかも会見では、ラザク首相に対する質問さえ許可されていないのだ。


マレーシア政府は何を守ろうとしているのか?

政府が情報を小出しにするのは、真相を隠し、何かを守ろうとする時だ。福島原発事故に際し、日本政府が隠したのは事故の真相と被害の実態だ。それによって守ろうとしたのは原発の”安全神話”と既得権に他ならない。事故をうやむやにすることで証拠をあいまいとし、将来起きる賠償からも逃れることが可能だからだ。

では今回、マレーシア政府が守ろうとしているのは何なのか。


マレーシアの”安全神話”とは

マレーシアは今や世界からお金も人材も集まるアジアで最も魅力のある国。
経済学者の山田順氏によれば、マレーシアはロングステイしたい国ランキングで7年連続1位。また世界競争力ランキングでも、マレーシアは日本や中国を上回り、アジアで最もビジネスしやすい国と評価されている。つまり、暮らしやすく仕事もしやすいのが何よりの売りだ(『脱ニッポン富国論』山田順著・文春新書参照)。

ところが今回の事件では、安全を預かるはずの機長自身がハイジャック犯ではないかという疑いすらもたれている。もしそれが事実ならマレーシアの信用はガタ落ちだ。治安への不安を持たれ、投資や人材の流入への悪影響も否定できない。


守ろうとしたせいで逆に失うこともある

あくまで仮定の話だが、もしマレーシア政府が当初から機長への疑いをもっていたにもかかわらず、その発表を遅らせ、自国の評価を守ろうとしていたとするなら、その行動によって逆に自国の信用を傷つけてしまったことになる。

事実なら皮肉な話だが、膨大なお金と人間を派遣し、捜索の協力している国から見れば皮肉では済まされないし、もし真相を知りながら無関係な海域を捜索させていたとなれば、国同士の信用も崩壊する。

それを防ぐ方法は一つしかない。いま政府が持っている情報を全て明らかにし、真相究明に全面的に協力することだ。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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