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いまさら聞けない、北欧家具・デザイナーの基礎知識(4ページ目)

日本と北欧諸国、遠く離れていますが「森林が多い」、「人々が質素で勤勉」、「細やかな作業が得意」など、実は似ているところも多いのです。そこで、代表的な北欧のインテリアデザイナー、北欧家具とその特徴、そしてよく聞く北欧テイストって何? といった疑問や、それを取り巻く周辺の情報をダイジェスト的に紹介します。

喜入 時生

執筆者:喜入 時生

インテリア・建築デザインガイド

日本人の感性と北欧デザインの親和性

日本と北欧の環境や文化は似ている部分も多いといわれます。多くを森林に恵まれ、スウェーデンなどは国土の約65パーセントが針葉樹林。スギやヒノキを構造材として日本人が木造建築を作ったように北欧も木造の民家が多いという共通点もあります。昔の日本人が美徳としたシンプルに暮らす清貧の美学もあります。

 

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ヤコブセンのデザインによるザ・スワンと呼ばれるチェア。SASロイヤルホテルのためにデザインされたロビーチェアで、日本でも公共施設でよく見かけます。北欧家具は木のイメージが強いですが、こうしたビビッドな色でモダンな雰囲気も北欧テイストの特徴のひとつです

北欧のエリアは、もともとは裕福な国々とはいえませんでした。ウェグナーのYチェアも現在はペーパーコードで座面が編んでありますが、最初は藁でした。フレームの木材も現地で調達できる安いバーチ材。これは北欧の昔の農村家具で使われた材料です。日本人が、スギなどの安い針葉樹を家屋の構造材として藁で屋根を作ったように、ウェグナーたちも目指したものは決して高級な家具ではなく、庶民の手に入るものを考えたのだと思います。話を欧州に向けると、いまでこそ、モダンデザインで評価される北欧ですが、特にイギリスなどの高級木材の家具を何代にもわたって長く使うというという文化圏からは低く見られる傾向がありました。

ビートルズの曲で有名な「ノルウェイの森」という歌があります。原題はNorwegian WoodでWoods(複数形)ではなく、Theも付いてないため、これは「木材」を意味していていて、本当の意味は「北欧の白木の家具」という北ヨーロッパの文化を見下げた表現らしいのです。欧米ではウォールナットやチェリーと比べ、北欧の白木のパインやバーチ材の家具は最も安物とされていました。歌の内容は「彼女の部屋に行ったら北欧の白木のチープな家具があって失望した」という内容なのだそうです(参考:『本当はこんな歌』町山智浩著)。

時代が変われば価値観も変わります。何も高級銘木を使うだけが家具ではないし、高価な家具ほど質やデザインがよいとは限りません。そうしたことを教えてくれるのが、スウェーデンのIKEAであったり、日本で言えば無印良品なのかもしれません。1950年代、日本は高度成長期にあって欧米に追いつけ追い越せという風潮があり、インテリア界も同様でした。日本を代表するデザイナー・柳宗理も、世界の潮流であった成形合板の技術を取り入れ、MoMAのパーマネントコレクションになるほど美しい、バタフライチェアを作りあげたのです。

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左が北欧スタイル、右が日本スタイルの家具たち。こうして並べて眺めても、かなり近い雰囲気があることが分かりますね。ノルディックフォルム、にっぽんフォルムのカタログより

西新宿のリビングデザインセンターOZONEの5階に日本のモダン家具を扱う「にっぽんフォルム」とノルディックのデザイン家具が並ぶ「ノルディックフォルム」というショップが並んでいます。それぞれの店を交互に見て回るととても楽しい気分になります。そして、日本と北欧のデザインの共通性に気づきます。それはもちろん木を多く使ったデザインが多いとか、どちらがマネをしたとかということではなくて、同時代のデザイナーが努力して美しい家具を作っていたことに感動するのです。実際、北欧のデザイナーが日本に影響を受けたという話は良く聞きます。

北欧デザインも変化していく

そうしたことを考えていくと、今の日本の北欧デザインブームはある意味、健全なのかもしれません。ノルディックデザインは、日本人の感受性にマッチしますし、今のスローな生活にもトレンドとしてはピッタリとはまっているともいえます(しかし、何でも北欧風として売り出す流れや、北欧製だけれども現地では安い古い合板のスクール家具をビンテージと称して売る風潮などは納得できませんが……)。IKEAに代表されるコスパもデザイン性も高い家具・雑貨類も時代とマッチしています。

日本でもバブル期の1980年代は、モダンデザインでも高級な革張りなどのイタリア製の家具を中心にコーディネートすることがステイタスシンボルでした。それは、北欧でも同じで、今では彫刻的なフォルムが大人気のデンマークのデザイナー、フィン・ユールの家具などは本国では、1980年代は忘れられた存在で、ユールの家具はものすごく安く取り引きされていたそうです(参考:『美しい椅子』えい文庫2003年の中の椅子研究家、織田憲嗣さんの1984年の回想より)。

椅子やインテリアデザインのトレンドは、どんどん変化しますし「自分が心地よく住めれば、どんな部屋でも良い」と私は考えています。しかし今回紹介したように、北欧のデザイナーたちはミッドセンチュリー期に世界のデザイナーと共闘し、日本はもちろん世界のインテリアデザインのレベルを上げたのです。そうした今やレジェンドとなった人々から教わることは実に多いのです。「なんとなくカワイイから」といった理由でもオッケーです。ぜひ、北欧デザイン、できれば本物に触れてみることをオススメします。

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