肥満・メタボリックシンドローム/肥満・メタボリックシンドロームの基礎知識

ダイエットの停滞期はなぜ起きる? 原因と乗り切り方

体重はダイエットの指標として有効です。時には、上手くいっている指標として、モチベーションアップの指標として、目標値の設定として、などさまざまな場面で気になるのが体重です。しかし、順調に体重が下がっている間は楽しいダイエット生活ですが、体重が下がらなくなるとダイエットのモチベーションも下がってしまいます。ダイエットの停滞期をどう乗り切るか、そのポイントをお話します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

ダイエットの停滞期とは?

果物の画像

ダイエットの一番良い指標は体重です。しかし、その体重が下がらなくなる時期があります。停滞期です。つらい停滞期は身体にとって必要な反応。ここを乗り切れば、ダイエットの成功はもうすぐです!

ダイエットの停滞期とは、ダイエットを始めてから順調に落ちていた体重が、同じダイエットを続けているにも関わらず、ある時からまったく減らなくなってしまうことです。一度でもダイエットをしたことのある人は、ほとんどの人が経験していると思います。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

ダイエットに停滞期がある理由

ダイエット中なのに、体重が下がらない……。

それは精神的には苦痛だと思います。しかし、ダイエットをしていることを知っているのは潜在意識で制御できる脳だけです。それ以外の脳を含めたほとんどの臓器(以下、身体といいます)はやせようと努力することがあるなどとは思ってもいません。体重が下がっていくと、身体は飢餓状態だと錯覚するのです。そこで基礎代謝や特異動的作用など身体の機能を維持するために使うエネルギーを減らして、体重が減らないようにコントロールするのです。これをホメオスタシス機能と呼びますが、これこそが「ダイエットの停滞期」の原因です。

もしかすると、「ホメオスタシス機能なんて、働かなければいいのに!」と思った人もいるかもしれません。しかし、ホメオスタシス機能は人間が生きて行くために必ず必要なのです。もし、本当に飢餓状態だとしたら、身体が今までと同じように栄養素を使い放題使ってしまい、エネルギーが枯渇してしまうと死んでしまいます。そうなる前に、身体は「いつも」の状態を保つことができるよう、いくつもの基準を作っています。その基準から外れたり、外れそうになったりすると、さまざまな器官が協力して限りなく普段の状態に戻すようにしているのです。

分かりやすい例でいえば、風邪などで熱が出たときを考えて下さい。風邪のウイルスを除去するために熱が出ます。熱を出すことで、ウイルスが生存しづらい環境を作ってウイルスを死滅させようとするのです。ウイルスが死滅すると、今度は高熱である状態は身体の本来の基準から外れていますので、平熱に戻って、風邪が治るというわけです。

ダイエットも同じ。故意に食べないのではなく、本当に食べられない状態であったなら、生命存続の危機です。食べないのか、食べられないのかの判断がつかない身体は、飢餓状態に耐えられるよう、ホメオスタシス機能を使って危機を脱しようとします。身体にとっては生命を守ることが一番大切なのです。

停滞期はいつ頃から始まっていつ終わるの?

停滞期の始まる時期には、諸説があります。体重が5%くらい下がったところから始まる、ダイエット開始1ヶ月くらいから始まるなどです。私の経験では、正しいダイエットを行っている人に関しては、ダイエット開始6ヵ月後くらいから停滞期が始まる人が多いような印象を受けています。患者様には「減量しようとしていることを身体に気づかれないように、あわてず1ヶ月に1~2kgくらいのゆっくりペースで減量して下さい」とお話ししています。こうすることによって、停滞期を遅らせることができますし、停滞期が来た時も無理なダイエットをしていませんから、対応しやすいのです。

また、停滞期はいつ終わるのかという質問もよく受けます。これは本当に個人差が大きく、2週間くらいでまた体重が下がり始めるという人もいれば、2ヶ月くらいかかる人もいます。本当にいろいろなので、期間については言及を避けますが、間違いないのは、停滞期でもまだ身体が重いと感じている場合、そのままダイエットを続けていればいずれまた体重が落ち始めるということです。ただし、目標体重に届いていなくても、停滞期に既にダイエット前より身体が軽く、体調がよいと感じている人は、そもそものダイエット目標が高すぎで、停滞期現在の体重が自身にとっての適正体重であることも考えられます。ダイエットの目標を現状維持に切り替えて、無理をしてでも減量を続けようとしないほうがよいこともあります。たとえば、高齢者の場合は、若干小太りのほうが健康で長生きです。

ダイエット停滞期の脱出方法

まだ適正体重に届いておらず、身体が軽いと感じない場合、停滞期を脱出する方法は1つしかありません。諦めずに根気良く、バランスのよい食生活と適度な運動を取り入れて規則正しい生活を維持し続けることです。諦めないで続けていれば、いずれまた適正体重を目指して体重が減っていきます。早く停滞期を脱出したいという気持ちは分かりますが、上記のように、身体は生命の危機を感じているわけですから、身体の状態が今の体重でバランスがとれるまで待つ必要があります。停滞期を脱するにはどうしても時間がかかります。

運動で消費カロリーを上げれば、今までのように体重が減少するのではないかと考える人もいるかもしれませんが、運動をしても1回ごとの消費カロリーはわずかですので、思ったほどの効果はあがりません。

ダイエット中、とくに停滞期のうちは、体重の変化がほとんどないためモチベーションが上がらず、ダイエットがストレスになりやすいと言われています。「やせよう」として躍起になるのではなく、リラックスするために身体を動かしたり、友だちとカラオケに行ったり、食べること以外のことでストレス発散するようにします。

ダイエットは焦ってはダメです。ゆっくり気長に行いましょう。
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