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3・5ニュージーランド戦はふたつの目的を持っていた!

3月5日の東京・国立競技場に、歓声とため息が交錯した。ニュージーランドとのテストマッチに臨んだ日本代表は、4対2で勝利を収めた。ワールドカップイヤーの初戦は、どんな意味を持っていたのだろうか。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

日本代表・Jリーグガイド

代表のプログラムを再起動する機会

昨年11月のベルギー戦以来となった今回の日本代表戦。監督と選手はふたつの目的を見据えて戦った。

昨年11月のベルギー戦以来となった今回の日本代表戦。監督と選手はふたつの目的を見据えて戦った。

ニュージーランド戦には、ふたつの目的があった。

ひとつ目は「確認」である。

日本代表は4-2-3-1のフォーメーションを採用しているが、所属クラブでは違うフォーメーションでプレーしている選手がいる。違うポジションで使われている選手もいる。日本代表と同じポジションでも、求められるプレーが違うこともある。

たとえば、日本代表でトップ下と呼ばれる「3の中央」でプレーする本田圭佑(27歳)は、ACミランで中盤の右サイドを担当している。アルベルト・ザッケローニ監督(60歳)のもとで「3の右」が定位置の岡崎慎司(27歳・マインツ/ドイツ)も、クラブではFWである。

しかも、日本代表が集まるのは昨年11月のベルギー戦以来だ。久しぶりのゲームという意味ではJリーグの開幕戦に似ているが、試合に向けたトレーニング量には大きな開きがある。

Jリーグのクラブは少なくとも3週間、平均で6週間ほどのトレーニングを経て開幕戦に臨む。一方、ニュージーランド戦の日本代表は2日間しか練習をしていない。試合前日に欧州から帰国した選手もいた。コンビネーションを確認するよりも、コンディション調整を優先せざるを得ないスケジュールである。

試合前のザッケローニ監督が、「代表のやり方を思い出してもらう」と話したのはそのためだ。各選手が日本代表用のプログラムを再起動し、およそ4か月の空白を埋める「確認作業」に、ニュージーランド戦の大きな目的があった。

なかでも、香川真司(24歳)と本田には有意義な一戦となったはずである。

マンチェスター・ユナイテッドで出場機会に恵まれていない香川は、前半開始早々に自ら獲得したPKをゲットした。公式戦での得点は、代表とクラブを通じて昨年9月以来だ。国立競技場のピッチに立った75分強の時間は、クラブで巻き返すきっかけになる。

本田はフル出場した。直接フリーキックから森重真人(26歳・FC東京)があげた3点目をアシストし、岡崎慎司がゲットした4点目も彼のラストパスから生まれた。流れのなかからパワフルな左足シュートを浴びせ、得意の直接FKでもゴールを脅かした。トップ下のプレーを「復習」する時間としては、悪くないものだっただろう。

目に見えるアピールをした選手は……

この試合のもうひとつのテーマが、「選手の見極め」である。

DF内田篤人(25歳・シャルケ/ドイツ)とMF長谷部誠(30歳・ニュルンベルク/ドイツ)は、ケガで招集を受けられなかった。FW柿谷曜一朗(24歳・セレッソ大阪)とDF今野泰幸(31歳・ガンバ大阪)は、コンディション不良で離脱してしまった。主力の相次ぐ欠場により、ザッケローニ監督はバックアップを担っていた選手たちを先発で送り出す。

内田の右サイドバックには酒井宏樹(23歳・ハノーファー/ドイツ)が起用され、森重が今野に代わって吉田麻也(25歳・サウサンプトン/イングランド)とセンターバックのコンビを組む。

長谷部に加えて遠藤保仁(34歳・ガンバ大阪)が足首痛を抱えるダブルボランチは、青山敏弘(28歳・サンフレッチェ広島)と山口蛍(23歳・セレッソ大阪)でスタートした。柿谷の先発が予想された1トップは、大迫勇也(23歳・1860ミュンヘン/ドイツ)である。

4-1で迎えた後半開始からは、酒井高徳(22歳・シュツットガルト/ドイツ)が右サイドバックに入った。ダブルボランチも細貝萌(27歳・ヘルタ・ベルリン/ドイツ)と遠藤の組み合わせがテストされ、清武弘嗣(24歳・ニュルンベルク/ドイツ)が岡崎に代わって2列目の右サイドで起用される。後半途中からは斎藤学(23歳・横浜F・マリノス)と豊田陽平(28歳・サガン鳥栖)も投入された。

試合終了をピッチで迎えたレギュラーは、GK川島永嗣(30歳・スタンダール・リエージュ/ベルギー)、吉田、長友佑都(27歳・インテル・ミラノ/イタリア)、それに本田の4人だけだった。

「これまで代表であまりプレーしていなかった何人かの選手を使うことができたのは、意義のあることだった」

試合後のザッケローニ監督はこう話した。

目に見えるアピールをした選手は少なく、4対0から2点差に詰め寄られるはがゆい展開は、率直に言って満足感を運んでくるものではない。それでも、「確認」と「見極め」という目的は果たされている。およそ4か月ぶりのゲームで、しかもテストマッチで、結果と内容を両立させるのはそもそも難しいものだ。

ニュージーランド戦のマン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら、岡崎になるだろう。

前半4分に電撃的な先制ゴールを奪い、同17分にダメ押しの得点を記録したのはもちろんだが、特筆すべきは相手DFラインの背後を突く動きだ。右サイドからゴール前へ入り込むダイアゴルランは、ニュージーランドにストレスを与え、日本の攻撃にダイナミズムをもたらしていた。ドイツ・ブンデスリーガでここまで9ゴールをあげている彼の好調ぶりは、頼もしいかぎりである。
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