家族であっても家計がもたらす幸福感は個々に違う
家計は家族全員に関わってきます。独身であれば、家計を見直し、無駄遣いを減らす作業も、自分にその意思があればスムーズに行えます。しかし、家族がいて、その目的を全員が共有していなかったらどうでしょう。自分1人が頑張っても、夫が、あるいは妻や子どもが無駄遣いをすれば、貯まる家計の実現は遠のき、本人はストレスを抱えるだけ。30代の場合、そういったケースも実はめずらしくはありません。こういう家族の場合の、貯められる家計に変わる方法を考えてみましょう。まず、頭に浮かぶのは話し合いでしょう。貯めるために、みんなも協力してほしいと伝えることです。しかし、それだけでは不十分だと、ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんは指摘します。
「もちろん、話し合いはとても大切。ぜひしてほしいと思います。ただ、自分の考えに家族を巻き込むことが、必ずしも効果的とは言えません。家族が幸せになれるよう私が頑張っているのだから、あなたも無駄遣いをしないように。そう言われても、個々に価値観は異なります。自分のハッピーを家族に押し付けてしまうだけかもしれません」
価値観のズレがエスカレートするとどうなるでしょうか。たとえば、妻が夫の飲み代が多いと指摘したら、夫は逆に妻のネット通販での買い物を非難。せっかく話し合っても、個々に自分の支出は必要と譲らなければ、こんな泥仕合にも発展しかねません。ここが家族で貯める難しさでもあるのです。
「だから、自分の価値観を押し付けるのではなく、自分が貯めるために努力している姿を家族に見せる。そこから、家族が個々に感じ取ってもらうのを待つ。遠回りのようで、実はこれがもっとも近道で確実のような気がします。お金の件で夫婦ゲンカが絶えない相談者の方がいました。結局、奥様が自分のできることを積み重ねていくうちに、ご主人も協力的になり、家計は改善。ケンカもめっきり減ったそうです。貯まる家計に変わるには、家族の協力は不可欠。そのためには焦らず、地道な努力が大切なのです」
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取材・文/清水京武 監修/八ツ井慶子(ファイナンシャル・プランナー)
イラスト/竹松勇二 パネルデザイン/引間良基