福祉避難所の必要性

災害が起こると真っ先に開設されるのが一次避難所です。そこに避難してくる人たちは「○○地域の人は○○避難所へ」との案内が周知されているはずなので、ある程度顔馴染みの人がそこに集まります。そして皆が協力し合いながら、数時間から数日を過ごすことになります。いろいろと苦労はあっても、病気や怪我をしていない人ならそれで何とか耐えることができることでしょう。

ところが、足腰の弱い高齢者や障害者、乳幼児や妊婦などは、集団で生活することにかなり無理が生じます。ひと晩くらいなら何とかできても、日を追うごとにさまざまな問題がおきてしまうので、できるだけ早く、一般の避難所とは別の避難所に移すことが理想です。

足腰の弱い高齢者

一次避難所の多くは体育館などの板の間です。そこで体を休めようとすると、少ない毛布や段ボールなどを駆使して、なんとか寝床を作り横たわるのが精一杯です。当然のことながら熟睡もできません。大きな災害では避難所に人が殺到することもあり、人々が身を寄せ合って暮らす状態も珍しくありません。すると、足腰の弱い高齢者はどうなるか?

元々体力がないうえ、自由に歩くこともできず、ひたすら座っているか寝た状態が続くことで、どんどん体力も気力も衰え、寝たきりに近づいてしまいます。

トイレの問題も深刻です。実は古い施設が多い一次避難所は洋式の数が少なく、膝や腰が悪い高齢者にとって、トイレに行くことが苦痛になってしまいます。自分の居場所からトイレまでの距離が長いため、できるだけ夜中にトイレに起きないよう、水分を制限する人も出てきます。これは東日本大震災の時に各地で実際にあった話で、便秘や脱水症状をおこすこともありました。

障害者

ただでさえバリアフリーの場所が少ないのに、車椅子などで一次避難所に長居するのは無理があります。精神障害の場合は、集団のなかで生活することが難しいケースが多々あります。正直な話、助け合いながら何とかというレベルでなく、介護や医療を必要としている高齢者と同じく、一刻も早くサポート体制の整った場所に移すべき人たちです。

乳幼児や妊婦

とくに乳幼児にとって、避難所の環境は劣悪です。ざっと考えられるトラブルだけでも

・泣き声などで他人に気を使う
・新生児の沐浴や乳幼児の入浴ができない
・オムツかぶれや汗疹など皮膚トラブルが増える
・離乳食が作れない、手に入らない

などがあるほか、お母さんにとっても、授乳スペースがない状態は大変なストレスになります。なかには駐車場に停めている車のなかで長い時間を過ごすことを選ぶ方もいますが、それがよい環境であるとは決していえません。

妊婦も同様に、避難所生活が長引くほどに「もし、ここで体調に変化があったらどうしよう」との不安でストレスがたまってしまいます。

ただし、基本的に子どもは親元にいること。妊婦も初期から40週、健康な人からリスクの高い人まで様々なので、一様に災害弱者とはいえず、自治体による対象把握は大変難しいことも事実です。そのため、高齢者や障害者の次にされるケースが多く、保健師や助産師ができる限り声掛けしながら、支援を必要としているかどうか、しっかり見極める必要があります。

福祉避難所の種類

石巻市で福祉避難所として使われた桃生農業者トレーニングセンター

石巻市で福祉避難所として使われた桃生農業者トレーニングセンター

なお、高齢者を対象とした福祉避難所には2つのタイプが考えられます。ひとつは、介護や医療を必要とする人たち用。もうひとつは、前述のように「これ以上寝たきりを増やさないためのもの」です。この2つをすぐに機能させることはとても難しいのですが、東日本大震災の時、宮城県石巻市では大混乱のなかでそれを実践することができました。

とくに寝たきりを増やさないための福祉避難所は、対象者を「お世話をするのではなく、自立を促す」ことに徹するとともに、ボランティアに対しても「できないことをだけをお手伝いする」よう求めました。

避難所はいつか閉鎖し、皆さんには次の一歩を踏み出してもらう必要がある。それをしっかり頭の中にいれながら対応することが大切ということですね。

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