新規公開銘柄への投資手法を解説
昨年2013年は、52勝1敗1引き分けの驚異の勝率96%だった投資方法があります。それは、新規公開銘柄(IPO)に投資して、上場初値で売却する投資手法です。今回は、この新規公開銘柄への投資手法について、解説いたしましょう。新規公開銘柄って何?
株式市場にデビューする事を新規上場(IPO)といいます。今まで関係者だけが株式を保有していた未上場企業が、公募増資・売出などで、一般の投資家から資金を募集します。この時の販売価格が公募・売出価格といわれます。また、上場した時に初めてつく株価が、上場初値です。昨年2013年は、全部で54銘柄の新規上場がありました。この54銘柄について、公募・売出価格で購入した投資家が初値で売却した場合に、下記の定義で勝ち・負け・引き分けとすると、何と52勝1敗1引き分けでした。
初値>公募・売出価格 勝ち
初値=公募・売出価格 引き分け
初値<公募・売出価格 負け
新規上場銘柄を購入するには
新規公開銘柄は、通常の株式の購入とは異なり、すべての証券会社では取り扱っていません。大元に新規公開銘柄を引き受けてきた証券会社があり、また証券会社ごとに配分される株数も異なります。銘柄ごとに、複数の証券会社が引受証券会社となるので、銘柄によって新規上場銘柄を買える証券会社が異なります。
欲しい新規上場銘柄がある場合、引き受け証券会社をチェックして、その会社で申し込む必要があります。例えば、藤本の所属するSBI証券は、昨年2013年では、ネット証券では最も数多くの新規上場銘柄を引き受けていますので、数多くの新規上場銘柄に投資することが可能でした。
そこで、ブックビルディングという新規上場銘柄の需要調査に参加することで、新規上場銘柄に応募できます。あらかじめ決められた○○円~△△円という仮条件がありますので、その範囲で何円なら買いたいか、申し込み時に記入して応募します。但し、応募したすべての投資家に新規上場銘柄が配分されるわけではありません。その証券会社の持っている配分株数以上に応募株数があった場合は、抽選などによって配分されることになります。
銘柄の選別方法
今回は、この新規公開銘柄について、銘柄の選別方法をご紹介いたしましょう。「タイミング」・「スケジュール」
実は、どの新規上場銘柄が、公募・売出価格より大きく上昇して初値を付けるかについて、最も重要なのは「タイミング」です。「スケジュール」と言っても良いでしょう。新規公開銘柄の初値買いを行うのは、多くの場合個人投資家です。機関投資家は、基本的には、新規上場銘柄の上場直後にあまり投資しません。なぜなら、新規上場直後は、値動きが荒く、機関投資家が売買するにはリスクが高すぎるからです。上場後、半年または1年を経過して、株価形成が落ち着いてきてから、企業業績と株価を考えて、株価に割安感があったり、業績に高成長が期待できる場合に少しずつ買い始めることが多いようです。
新規上場銘柄の初値については、いかに個人投資家の買いを集めることができるかに、掛かっていると言えそうです。
そこで、最も重要なのは、「タイミング」「スケジュール」といえるのです。新規公開銘柄の初値を買いに行くような、「リスクの高い」投資を行う個人投資家は、限られた投資家です。その限られた投資家の限られた投資資金が、様々な新規公開銘柄に「グルグル」と循環して、初値買いの投資が行われます。だから、どんなに良い銘柄であっても、同じ「タイミング」「スケジュール」でもっと魅力的な銘柄があれば、そちらに資金は流れます。
昨年2013年に、唯一負けてしまったウィルグループが新規上場したのは、12月19日です。何と、同じ日に同社を含め4社も新規上場していたのです。
出来る限り、他の銘柄との重なりが少ないタイミングでの新規上場の銘柄が有望ということになります。また、新規公開銘柄のスケジュールについては、季節性があります。決算期の都合で、3月、6月、7月、11月、12月などが上場銘柄の多い月になります。
2013年の月別新規上場銘柄数
1月: 0
2月: 4
3月: 9
4月: 2
5月: 0
6月: 5
7月: 4
8月: 2
9月: 3
10月: 3
11月: 5
12月: 17
「テーマ」
次に重要なのが、「テーマ」です。そのときの時流に乗って、関連銘柄が大きく上昇しているような「テーマ」を持った新規公開銘柄については、初値が大きく上昇する可能性が高いです。
昨年では、「バイオ」のリプロセル(<4978> ジャスダック)公募・売出価格3,200円 初値17,800円、騰落率456.25%
(5.56倍)や、「ネット」のじげん(<3679> マザーズ)公募・売出各600円、初値1,750円、騰落率191.66%(2.92倍)でしょう。
今年も「バイオ」「スマホ」関連などが、引き続き人気を集めそうです。
「新規性」
次に重要なのは、「新規性」です。同じような業種・業態の銘柄が上場している場合、その銘柄と比較されますので、極端な高値にはなりにくいです。元々に仮条件などを既存の上場銘柄の株価を参考に決めることが多いからです。昨年だと、ネットで写真を販売するフォトクリエイト(<6075> マザーズ)公募・売出価格1,670円、初値3,775円、騰落率126.04%(2.26倍) は、既存上場銘柄に全く同様な業態の銘柄がない「新規性」の高い銘柄でした。
「流動性・時価総額」
また、個人投資家の限られた資金での買いになりますので、公募・売出価格の時点で、時価総額があまり大きな銘柄については、大きな値上がりを期待し難いことになります。基本的には、東証1部に直接上場するような銘柄については、初値が公募・売出価格を大きく上回ることは少ないようです。 昨年では、時価総額が1兆円超えていたサントリー食品インターナショナル(<2587> 東証1部)公募・売出価格 3,100円、 初値3,120円、騰落率 0.64% などでしょう。
逆に、時価総額面で軽量級の銘柄のほうが、少しの買いで初値が高騰しやすい傾向にあると言えそうです。
「相場の地合い」
また、その時の相場の地合いにも大きく左右されてしまいます。仮条件などが発表されてから、全般相場が堅調であったり、特に「テーマ」株の場合、同じ「テーマ」の銘柄が人気となり、株価が高騰してしまうと、新規上場銘柄に相対的な割安感が生じたりします。逆に、全般相場が大きく下落してしまったり、その「テーマ」関連株が下落してしまうと、相対的に新規上場銘柄に割高感が生じることになります。
是非、このような銘柄選定のポイントをチェックしながら、新規公開銘柄への投資を考えください。
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