優勝候補を牽引する佐藤寿人と中村俊輔

2014年のJリーグは、J1、J2ともにベテラン勢の活躍に注目が集まりそうだ。

2014年のJリーグは、J1、J2ともにベテラン勢の活躍に注目が集まりそうだ。

2014年のJ1リーグは、3連覇を目ざすサンフレッチェ広島が先行し、その他のチームが追走する展開となりそうだ。森保一(もりやす はじめ)監督率いる広島の完成度は、2月22日のゼロックススーパーカップでいきなり証明された。昨季のリーグ2位にして天皇杯優勝の横浜F・マリノスを、2対0で下したのである。

F・マリノス戦では野津田岳人、浅野拓磨の19歳コンビが得点をあげたが、チームを支えるのはキャプテンの佐藤寿人だ。身長170センチの小柄なストライカーは、抜群の得点感覚を強みとする。巧みなポジショニングで味方選手からラストパスを呼び込み、DFとの体格差をはね除けてゴールを奪うのだ。

2004年から10年連続で2ケタ得点をマークしている実績は、もうすぐ32歳になる佐藤がいまなお進化していることを物語る。今シーズンも得点王候補のひとりにあげられる。

広島を追いかけるF・マリノスには、ふたりのベテランがいる。

中村俊輔と中澤佑二だ。

昨年のJ1でMVPに輝いた中村は、背番号を「25」から「10」に変えた。クラブレベルで自身のアイコンと言っていい番号を背負うのは、イタリア・セリエAのレッジーナに在籍した2004-05シーズン以来だ。日本屈指のレフティーは35歳となり、いままさに円熟の境地を迎えている。

中澤も同様だ。2月25日に36歳の誕生日を迎えたこのディフェンダーは、国内屈指のレベルを維持している。高さと強さに陰りはなく、厚みを増した経験がプレーの安定感を逞しくしている。

今シーズンのF・マリノスは、2004年を最後に遠ざかるリーグ制覇を目ざし、2005年以来となるAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)にも挑む。精神的なタフネスさと駆け引きも必要なアジアの舞台で、彼らの存在はチームの大きな力になるはずだ。

中澤とともに2010年の南アフリカ・ワールドカップに出場した田中マルクス闘莉王は、今シーズンから名古屋グランパスのキャプテンを務める。

センターバックでありながら高い得点力を誇り、ゴール前では確実に制空権を握る。コーナーキックやフリーキックなどのセットプレーでは、攻守ともに頼りになる男だ。闘莉王や中澤の日本代表復帰を望む声が根強いのも、セットプレーからの失点が多い現状を改善できる期待感があるからに他ならない。

J2にもワールドカップ経験者が!

J2リーグにも歴戦の勇士がいる。

昨シーズンいっぱいでジュビロ磐田との契約が満了した川口能活は、今季からJ2のFC岐阜でプレーする。昨季のJ2で22チーム中21位に終わった岐阜への移籍は、大きな驚きをもたらすものだった。

とはいえ、本人は「自分を必要としてくれるチームでプレーできるのは素直に嬉しい」と話し、「コンディションはここ数年で一番と言っていいぐらいにいい」と、プロ21年目のシーズンを心待ちにしている。

FC岐阜はクラブハウスや専用の練習場を持たない。J1に比べると環境は劣るが、「それだけに、ハングリーな選手が多い。僕も練習着を自分で洗濯しています」と、38歳のベテランは笑みを浮かべる。02年と06年のワールドカップをともに戦った三都主アレサンドロ(36歳)らのチームメイトとともに、川口はFC岐阜を牽引していく。

今季からJ2へ昇格したカマタマーレ讃岐には、我那覇和樹がいる。かつて川崎フロンターレの得点源として活躍し、イビチャ・オシム監督のもとで日本代表に招集されたストライカーだ。

過去3シーズンはJFLのFC琉球(現J3)に在籍していたが、生まれ故郷を離れて再びJリーグの舞台へ立つ。J1、J2、JFLを含めて350試合以上の出場経験を持つベテランは、「Jリーグ元年」を迎えたクラブを支えていくことだろう。

6月にはさらにもうひとり、元日本代表がJ2にやってくる。1998年、02年、06年と3度のワールドカップに出場した小野伸二が、コンサドーレ札幌に加入するのだ。

オーストラリア・Aリーグのウェスタン・シドニー・ワンダラーズで2012年9月からプレーする小野は、リーグ戦で首位争いを演じるチームで中心的役割を担っている。経験、実績、技術を兼備した34歳の加入は、J1昇格を目ざすチームの追い風となるに違いない。J2リーグ全体の見どころも増えるはずだ。

カズは情熱を燃やし続ける

Jリーグを彩るベテランについて語るなら、この選手にも触れておかなければならない。

カズこと横浜FCの三浦知良である。

1993年のJリーグ開幕当時から現役を続けるJリーガーは、2月26日に47歳となるカズひとりだけだ。葛西紀明がスキー界のレジェンドなら、カズはサッカー界の“生ける伝説”である。世界を広く見渡しても、この年齢でトップレベルをキープしている選手はいない。

ワールドカップイヤーとなる2014年を迎えるにあたって、カズは「選手なら誰もがワールドカップに出たいと思うはず。その競争が、それぞれのチームや国全体のレベルアップにつながる」と語る。

ただ、と彼は続ける。

「僕を含めたJ2の選手がワールドカップを思い描きながらやるのは、現実的に力不足、経験不足なところがある。トレーニングから高めていかなきゃいけないし、オフにどれだけ自分を高めてシーズンを迎えられるか。ワールドカップに出たいと口で言うのは簡単ですけれど、やらなきゃいけないことがたくさんあるので、それどころじゃないんですよ」

  2014年シーズンの目標を問われると、「チームに貢献しなければいけない」というシンプルな答えが返ってくる。静かに沸き上がるようなモチベーションが、カズのなかで息づいている。

長い歴史を誇るプロリーグでは、若手がベテランに学び、ベテランが若手に刺激を受けるサイクルが成り立っている。競技力の向上と継続的な繁栄には、将来有望な若手だけでなく、修羅場をくぐり抜けてきた選手も必要だ。サッカーに情熱を燃やし続けるベテランのプレーにも、注目していくべきである。


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