クリッカーの音とご褒美とを結びつけ行動を強化
クリッカーにもいろいろな種類があり。手前のものは手の握りにもフィットし、ボタンも飛び出ている分押しやすいタイプ。 |
クリッカーを鳴らした後には、大好きなご褒美を与えてあげます。楽しいことがあるというのは人間であっても同じですが、意欲を高め、脳を刺激して学習能力もアップしますから、この一連の作業を何回か繰り返すことで、目的の行動は強化されていくことになります。
ここまでの話を聞いて、「ん? それじゃ、ただ言葉で褒めておやつをあげるだけでも変わらないんじゃないの?」と思いませんか? いえ、それが少し違うのです。何が違うのか?
クリッカーの役目
ここで一つ説明をしておきましょう。このトレーニングを始めるにあたって、「クリッカーが鳴る=楽しいことがある、ご褒美がもらえる」といった方程式を、まず犬に覚えさせなければなりません。この原理を犬が理解できたところから、本格的なトレーニングに移っていくわけです。ここでは手っ取り早くご褒美をおやつとして話を進めていきますが、クリッカーを鳴らすごとにおやつを与える、これを繰り返すことで、犬にとってクリッカーの音はとても心地よいもの、楽しいことを期待させるものになっていきます。
「なぜ言葉ではなくクリッカーなのか?という質問をよく頂きますが、“そう!”にしろ“いい子だ”にしろ日常的によく使われるものであり、時に感情にも左右されるのが言葉というものです。そこだ!というピンポイントを伝えるには、非日常的な音であること、例え騒音などがあってもよく通る音であること、一定のトーンで瞬時に伝えることができること、クリッカーにはこうした言葉とは違う特性があり、動物でも人間でもよく反応するものなのです」(山田さん)
犬だけでなく、いろいろな動物に使えるトレーニング法
クリッカートレーニングの原型は、元々海洋動物の世界で用いられていた。 |
元々は、1960年代にはすでにイルカを代表とする海洋動物に取り入れられていたトレーニング法でした。犬に比べて彼らはその都度褒めてあげることも難しく、また強制に対しても弱い傾向にあります。そこで取り入れられたのが、正しいことをした時にそれを強化するという考え方。
一定の音(海洋動物の場合、多くが笛の音)がすると魚がもらえる。これを理解したイルカ達は、自分がある行動をとった時にその音が聞こえると、もっと魚を食べたいという気持ちが脳を刺激し、どうしたらもっと食べられるのか?と考えるようになり、魚と言うよりその音に集中するようになります。好ましい行動をとった時に繰り返しマークしてあげることで、イルカ達にその行動が強化され、シーワールドなどでよく見られる宙返りなどの技を披露してくれることになるわけです。
そもそも「動物がものを考えるか?」という哲学的なことはさておき、動物がそれぞれに遺伝子に組み込まれた生得的な行動というものは、経験を積むことで変化するものです。つまり、動物は学習をするということ。よって、このクリッカートレーニングは、犬やイルカのみでなく、猫や鳥、馬、ネズミなど多くの動物に応用が可能なのです。
次のページでは、クリッカートレーニングの「利点」について。