そんな中で1990年代頃から一般の飼い主さんにも注目され始めたものに、「クリッカートレーニング」があります。その注目度は加速度を増している感もありますが、一方で、興味はあるものの、今ひとつよくわからないという声もよく耳にします。
そこで、今回からシリーズ『愛犬と楽しくクリッカートレーニング!』と題し、ポイントとなるところや、実際のトレーニングの仕方などについてご紹介していきたいと思います。
=Index=
・クリッカートレーニングの基本ポイント
・行動の強化とクリッカーの役目
・クリッカートレーニングの利点
・ツールとしてのクリッカーとご褒美おやつについて
そもそも「クリッカートレーニング」って何? そのポイントは?
「自分の犬を知るきっかけになると共に、お互いの絆を深めることのできるトレーニング方法」と山田さん。 |
第1回目となる今回は、クリッカートレーニングの基本について学んでいくことにします。
クリッカートレーニングを始めるにあたって、まず必要なことは何でしょう? 一つ目は、どういった考え方を基にトレーニングが進められていくのかを理解すること。二つ目は、必要なものを用意すること。三つ目は、楽しむ気持ちを持つということ。もう一つ加えるなら、愛情、そして多少の忍耐が必要だということです。
では、最初にトレーニングの考え方についての説明から。クリッカートレーニングでは、以下の三つのポイントが重要になります。これが、このトレーニング方法の基本中の基本となるものです。
1:(強化したい)行動を観察する。
2:“マーク”する。
3:その行動を強化する。
何事もタイミングが大事!
クリッカートレーニングでは、例えば“スワレ”を教えたいと思った時、無理に犬の腰を押さえたり、リードで首を吊り上げたりなどはしません。犬が自然に“スワレ”の姿勢をとるまでひたすら待つのです。“スワレ”というコマンドも出しません。待つと言っても、犬にとって座る姿勢は日常よくする行動の一つですから、それほど苦労することもなく座る瞬間を捉えることができるでしょう。要は、教えたい行動を犬が自らとった時、その瞬間を見逃さないように観察する目を持つことが大事だということです。さぁ、犬が座りました。その瞬間を“マーク”します。マークとは何か? 犬に「そう、そう、それだよ!」とその行動に対して気づきを与えるためものです。それに用いられるのがカチ、カチと独特の音が鳴るクリッカーと呼ばれるもの。マークするという意味で、別名“イベントマーカー”と呼ばれることもあるそうです。マークする時のポイントは、その動作をまさにしている現在進行形の時、山田さんの言葉を借りれば「脳から運動神経への信号が伝達されている最中」にカチッとクリッカーを鳴らすということ。この例で言えば、座ってしまった後に鳴らしてもそれほど意味がないということですから、いかにその瞬間を捉えることができるかというのが、トレーニングのテーマにもなります。
「観察」から「マークする」まで、ここという時にシャッターを切るような感じで、写真を撮ることをイメージすると理解して頂きやすいのではないでしょうか。
ここで“スワレ”などのコマンド(言葉による合図)はいつ教えるのか?と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。それは教えたいと思う行動(この場合は座ること)とクリッカーの音とが完璧に結びつけられた段階で、初めて教えることになりますので(クリッカートレーニングの場合、“キューをつける”という言い方をする)、実践編に移った後においおい説明をしていきたいと思います。コマンドを覚えた後には、クリッカーは必要がなくなります。要は、クリッカーは何かの行動を教える段階のみで使われるものなのです。
次のページでは、「強化」と「クリッカー」について。