加熱し過ぎたスペック合戦が終了し、新しい顔を見せるビッグスクーター市場
2000年代前半にビッグスクーターブームが巻き起こりました。ブームはどんどん加熱し、販売台数がどんどん伸びたため、オートマのビッグスクーターをマニュアルのように扱うことが出来るモードを装備したり、オーディオシステム、イモビライザー、スマートキーシステムなど豪華な装備が搭載されていきました。
そのため結果的には販売価格はどんどん高騰していくことに。ビッグスクーターのカスタムも加熱し、過度な改造を施した車両が増えたため、世間的なイメージも徐々に悪くなり、次第にビッグスクーターのブームは収束していきました。
しかし、ブームのきっかけは利便性にあります。優れた走行性能やオーディオシステムはオプションでしかなく、オートマで運転が簡単。シート下には荷物がたくさん収納できるということがビッグスクーターのアイデンティティーです。
ホンダ・フォルツァSiを見てみると、イモビライザーもスマートキーもオーディオシステムも付属していません。しかし、価格は従来のビッグスクーターの価格に比べて遥かに安くなりました。
現在も販売されているホンダ フォルツァZがメーカー希望小売価格69万9千300円なのに対して、フォルツァSiは53万9千700円。その差15万9千600円です。
豪華なオプション装備を全て取り払い、タイ生産にしたことで、価格を一気に引き下げたフォルツァSi。その性能、使い勝手はどうなのか? 一週間フルに使い倒してみました。
フォルツァSiという名前ながら、PCX系の流れを感じるエンジン
フォルツァSiと同じタイ生産のバイクにホンダのPCX150があります。PCX150の試乗レビューは以前に掲載いたしましたが、フォルツァSiに乗ってみたエンジンの印象はPCX150のエンジンを250ccにパワーアップさせたような印象です。
低速から100キロ前後までスムーズに加速し、エンジン音はとても静かです。PCX同様にどこかの回転域で急激に加速するわけではなく、加速の谷がなく、低速から高速域までもたつくことなく加速します。
もちろんパワーの特性がPCX150に似ているだけであって、フォルツァSiは250ccのスクーターですので、PCX150に比べたらワンランク上の力強さを感じます。
また、フォルツァZの車重が201キロなのに対して、フォルツァSiは192キロと軽量に仕上げているため、250ccエンジンの力強さに、軽量なボディーの恩恵が与えてくれる軽快さも兼ね備えていることも付け加えておきます。
フォルツァSiのブレーキ性能は抜群だが使いにくいと感じる人も?
フォルツァSiはブレーキシステムにコンビネーションブレーキを採用しています。通常スクーターの場合、左のブレーキレバーが後輪ブレーキ。右のブレーキレバーが前輪のブレーキを制御します。
しかし、コンビネーションブレーキは左のブレーキレバーを握ると、前後のブレーキが適切な配分で作動するようになっています。車体を見た時に赤の大きなブレーキキャリパーはとても目立っていますが、性動力がとても高くしっかりと効きます。
後輪のブレーキだけを思い切りかけてしまうと後輪がロックしてバイクのバランスを崩してしまうことがあるため、基本的には減速する場合は前後のブレーキを同時にかけるのが鉄則です。
しかし、後輪ブレーキには後輪ブレーキの役割があります。ある程度減速した後の停車位置の微妙な調整や、コーナリング時に少しスピードを出しすぎてしまった場合も後輪ブレーキで制御します。
もちろんコーナー手前ではしっかりと減速してからコーナリングするのが鉄則ですが、意外と細かいところで後輪ブレーキのみを使うこともあるのでバイクに乗りなれている人にとっては、コンビネーションブレーキは違和感があるかもしれません。
ビッグスクーターのアイデンティティーであ利便性は向上している
フォルツァSiのシート下収納は53Lの大容量でフルフェイスのヘルメットを入れることも可能です。フロントパネルの左側インナーボックスを開けてみると、奥にアクセサリーソケットが装備されています。
スマホ文化が広まり続けていますが、未だにバッテリーのモチが悪いと言われていますので通勤時などにスマホの充電をするなど、工夫次第で使い勝手がよさそうな装備です。
ただし、インナーボックスの中は夏場は熱がこもりやすくなりますし、振動もあり、雨の日は多少水が入る心配もあります。
車重が軽くなった分、取り回しも楽になり、足回りのセッティングもよいため、ヒラリヒラリと軽快に走ることが出来ますので、装備、走行性ともに使いやすくなっています。
バイクを日常の足として使う人にとっては最高の相方になりうるマシン
1週間みっちりフォルツァSiをお借りして毎日の足として使わせていただきましたが、メインの用途は通勤です。私は片道30キロ程度を毎日バイクで通勤していますが、普段は400ccのネイキッドバイクを使っています。今回は折角なので毎日の通勤で使わせていただきましたが、通勤はとても楽でした。フォルツァSiのシート幅が広いため、身長165センチの私にとっては多少足つきの悪さはありましたが、バイクにまたがり、走行している時の姿勢が抜群に楽でした。
ビッグスクーターが出始めたぐらいの頃に通勤の足に使っていたことがありますが、当時に比べて、遥かに乗りやすくなっています。豪華なオプション装備が全て省かれ、シンプリケーションに取り組み、原点回帰を意識した車両ですが、以前にビッグスクーターに乗っていた経験があるライダーであれば、進化を感じることが出来る一台です。
フォルツァSiを少しカスタムするなら
どうせカスタムするなら快適なフォルツァSiを更に快適にしてみてはいかがでしょうか?リアキャリアとリアボックスを装着すれば無敵の収納力です。特に真冬はグローブをしていても手先がしびれるほど冷たくなることがあります。ナックルガードを装着する事で冷えを緩和することができます。
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