家族より住民優先

その地域で起こった災害は、その地域の保健師(自治体職員)が担当する。当たり前のことですが、ここに無理が生じることがあります。大規模な台風や地震災害だと保健師も被災者のひとりになり、避難生活をしながら活動をすることになってしまうからです。

自身の心が傷ついている状態で、100%の力を出し続けるのは無理があります。自治体職員である限り避けて通れない道ですが、東日本大震災の時のような想定を大きく上回る災害では、家族の安否確認さえできずに仕事を続けなければならないケースも多々ありました。保健師は、もともと看護の世界を目指した人たちですから、限界を超えて働いてしまう傾向があります。住民の心と身体を守るための使命感で真面目にやればやるほど、自分が倒れてしまうことも見受けられました。

大規模災害が起こると、被災者を助けようと全国から手が差し伸べられます。しかし、対象はあくまで被災した住民であり、そこに24時間体制で働く保健師たちが含まれるという認識が、まだまだ欠けているように思えます。ここをどうするのか、これから大きな課題になるのではないでしょうか。

石巻市役所

大きな被害を受けた石巻市役所

というのも、被災地の保健師をはじめとした自治体職員は、その地域のことをよく知っている人たちです。誰がどこに住んでいて、災害弱者はどの地域に多いのか。誰を優先して助けなければならないのか、がけ崩れなどで通行不能な箇所、迂回路、道の状態など、地元に住んでいるからこそわかる情報が、とても貴重になるのです。

だからこそ、その地元をよく知る人たちが倒れてしまわないよう、しっかり支えていく必要があるわけです。そうしないと、いくら応援が派遣されても、効率よく活動することができないからです。

理想的な支援とは

では、被災地の保健師がとてもありがたいと思う支援とはどのようなものでしょか? いくつかご紹介しますと、
  • 何も言わなくても仕事内容を理解し、自ら動いてくれる
  • 被災地保健師の苦悩をよく分かっている
  • 全ての活動を自前の装備と物資で完結させる
などです。宮城県東松島市を支援した国立国際医療研究センターの活動などは、とてもよい例だと思います。逆にありがた迷惑な支援は

1 何をしたらいいのか分からず指示を仰ぐ
2 来てあげたんだからサポートをしてくれという
3 住民の自立をさまたげるような活動をする

などです。ちょっと分かりづらいかもしれないので、もう少し詳しく書くと

1は、手いっぱいの状態なのに指示ばかり仰がれては、自分たちの仕事を進めることができず、かえって邪魔になるから。
2は、一部の医療関係者に見られた傾向で、地元の保健師を看護師として付けてくれと要望するようなこと。来てあげたんだから、地元の誰かが手伝うのは当たり前(大名支援)な態度は困ります。
3は、避難所などで被災住民の希望を何でも叶えてしまい、贅沢なまでの支援をしてしまうこと。たとえば、歩くことができる人に対し、食事の配膳など全てやってしまうこと。→座ったまま、寝たままでの生活を助長してしまうため。これは民間のボランティアにありがちな傾向です。

せっかく支援に来てくれるのだからありがたいけれど、結果的に地元の足を引っ張るようなことは避けてもらいたいものですね。でも、そう思ってもなかなか当事者(被災地保健師)が口に出すことができないので、私が変わりに書いてみました。

カウンターパート方式

なお、被災地の保健師ら自治体職員を対象にした支援は、同業である他自治体が関わるのが一般的です。どこを支援するのか、その都度決めているケースもありますが、東日本大震災では、関西広域連合(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県、京都市、大阪市、堺市、神戸市)が、岩手県、宮城県、福島県の被災県に対し、それぞれに応援府県を決め支援を行っていました。これはカウンターパート方式と呼ばれ、保健師関連だけでなく、警察や消防、自治体事務、支援物資、避難者受け入れの全てを一括して担当府県が支援するものです。ご参考まで。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。