電気自動車・EV/電気自動車・EV基礎知識

日本における充電スポットの普及に向けて(3ページ目)

電気自動車の短所である航続距離の短さをカバーする役割を持ち、ユーザーが充電切れを危惧せず、安心して運転するために必要不可欠なのが、充電インフラの普及です。以前、電気自動車の充電器について詳しくご説明させていただきましたが、実際にそれらの充電インフラはどのようにして普及されていくのでしょうか。

中島 徳至

執筆者:中島 徳至

電気自動車ガイド

中速充電器の可能性

今日の急速充電器の価格は、技術の向上と合わせて安価になりつつあります。日産は、50kwの急速充電器を60万円と破格の値段で販売し、ここに補助金を使うと実質費用は約32万円程度であると言われています。他の急速充電器を見ても、補助金を使用して75万円程度で購入することができる急速充電器が年々増加しています。こうして各企業、政府が急速充電器普及に力を注いでいますが、ユーザーが真に必要としているインフラは、果たして50kwもの電力を必要としているのでしょうか。

50kwの急速充電器の本体価格を、例えば仮に50万円で購入できたとしても、急速充電器は設置するための工事費が安くても84万円程度、設備状況や場所次第では300万円以上かかるといわれています。通っている電流が少なければ電線まで引き、本体と設置工事費用合わせて安く見積もっても150万円近くの値段はかかる計算です。もし、普通充電よりも充電スピードが早く、急速充電よりも安価なユーザーのニーズをとらえている充電器があったとしたらどうでしょうか。

(図)20kwタイプの急速充電器(高砂製作所)

(図)20kwタイプの急速充電器(高砂製作所)

そこで近年、注目され始めているのが、20~40kW程度の中容量タイプの急速充電器(以下中速充電と呼ぶ)です。

私は個人的に今ユーザーが求めているのは大型の急速充電器ではなく、小型で安価なものだと考えます。使用状況を考えると、設置代、本体価格も含めた合計額約150万円の急速充電器を使って5分で充電を終わらせなければならないシーンはそう多くないはずです。例えば、法人の場合は昼休みの1時間休憩などを利用して充電できれば十分だという二―ズが多いのです。

実は、一般的な事業所等では一日あたりの走行距離が安定しているため、50kWのものを導入せずとも事足りる場合は少なくないのです。さらに工事費のことを考えると、50kwタイプの充電器は、高圧タイプのインフラ増強を行う必要があり、その分費用が高くつきます。20kWであれば、大規模な工事を行なわずに工事費を削減することができるのです。実際にさまざまな充電器メーカーから20kW中速充電器の販売が始まっています。そしてこれら小、中型の充電器の普及をサポートすると期待されているのが、ソフトバンクが開発した充電認証機能を備えるユビ電システムです(詳しくは次号で紹介)。

私は上記のように時間に余裕があれば、中速充電器で60分かかっても問題ないと考えます。現在主流となっているのは50kWタイプですが、電池残量がゼロの状態から充電することは想定できないため、充電器の大きさとしても20kWで十分でしょう。充電器設置の価格の問題などを考慮すると、20kWタイプの小型で中速な充電器の開発もこれからますます進んでいくと私は考えます。そして、普通充電と急速充電、特に中速充電のすべてがバランスよくゾーン上に設置されれば、おのずと充電インフラの普及は進んでいくでしょう。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます