ナイキを脅かす成長スポーツアパレル、アンダーアーマー(UA)
アンダーアーマー(ニューヨーク証券取引所上場、証券コード:UA)はワシントンに近いボルチモアにあるスポーツアパレルメーカーです。製品別売上の7割超はアパレルウェアで、メンズ及びウィメンズと子供向けのものがあります。種類もラインニングウェアからベースボール、サッカー、バスケットボール、ゴルフなどの各ウェアがあるほか、最近街着・オフィス着にもなるメンズ用チノパンツなども販売開始しました。そのほか靴とアクセサリーがあるという構成で、北米を中心に販売し、日本ではドームという会社が正規ライセンシーとしてアンダーアーマーのロゴを入れた各製品を製造販売しております。ライセンス製品も本社の承認をパスしたデザイン、素材、色のものとなりますが、厳密には米国製と日本製は違うものとなります。販売形態の多くはスポーツ店へ卸販売する形となりますが、加えて米国には114の直営店・アウトレット販売店を持ち(2010年は54店舗だった)、ネット販売も行います。簡単に言えばナイキと同じような会社です。昔ナイキが「Just Do It」という大キャンペーンを行っていたように、現在同社は「I WILL」というキャンペーンを展開中で、多くの有名アスリートが同社製品を着用して自分の目標等を語るというプロモーションが進行中です。同社製品の特徴は「機能素材」と呼ばれる吸汗、即乾、保温、防水、ストレッチ性等の各機能を持った繊維を使用することで、そのほか機能を重視したデザイン及び縫製手法も売りとなっています。ユニクロが「ヒートテック」や「シルキードライ」を売りにしているようなものです。
ナイキよりも規模は劣るものの成長性については勝る
同社の「コールドギア」という一連の製品は、冬でも薄着一枚で寒さを凌ぐというもので、体温を衣服内に閉じ込めて保温し、汗を外へ逃し、加えて伸縮性に富んで動きやすいというトレーニングウェアです。またシューズの底にもこだわり、反発性や軽さを追及する為に、ブラジャー工場でしか作れない特殊な機能を持つパーツを取り入れています。撥水や即乾性に優れた機能素材は昔からある合成繊維の一種であり、最新技術ではないと思いますが、このような機能性を徹底的に消費者にアピールし、認知させようとする努力を行っている会社です。そして機能性への追及姿勢をマーケティング、ブランディング(差別化)の根本とし、「I WILL」キャンペーンの広告を打ち、従来メンズ中心だった製品をウィメンズやキッズ向けに拡大し、さらに北米中心から欧州、南米、そして中国に拡大して行こうとしている途中です。上海には大きな直営のイメージショップが出来たばかりです。南米や中国は将来の大きな成長目標となるものですが、現時点では、ボルチモアから始まったブランドが急速に米国で受け入れられ、米国内でナイキのライバルとなる存在にまで成長してきた段階です。勿論規模ではナイキより格段に小さい(時価総額は7.5倍差)のですが、大きなスポーツ店ではナイキと同じくらいのスペースを取るほどの人気で、成長性という点では勝ります。上の業績グラフにあるように、2000年の同社売上は5ミリオン・ドル(500万ドル=約5億円)に過ぎなかったものが、3年後には115ミリオン・ドル、以降も3年ごとに431ミリオン、856ミリオン、1,835ミリオン・ドルと、倍増以上のペースで市場に受け入れられてきました。株式市場でも同様に急成長を遂げてきた銘柄です。
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