2013年度の内部被曝検査におけるセシウムの検出率
ホールボディーカウンターによる内部被曝の検査は、放射性セシウムが体内にどの程度蓄積してしまっているかを調べるために行われています。放射性セシウムは、原発事故後周辺地域に飛散した放射性物質の中で、現在最も体に影響を与える割合の高いと考えられる物質です。その放射性セシウムは、放射性物質によって汚染された食品を摂取することにより、体内に入ってきます。空気からの影響も完全にゼロというわけではありませんが、全く無視して問題ない程度しか存在しません。実は、南相馬市、相馬市で2013年度に行われているホールボディーカウンターの検査で、小児の99.9%以上、成人の95%以上からは放射性セシウムを検出していません。言い方を変えると、チェルノブイリの事故や、それ以前から使用されてきた器械で検出できるレベル以下(検出限界以下)であるということです。
値で言うと、現在の大人で0.01mSv/年程度以下であることが分かっています。放射性物質が飛び散ったはずなのに……とこの数値の少なさを疑問に思われる方も多いかもしれませんが、これにはいくつかの理由があります。
1歳児は10日で排出・成人は4ヶ月で排出……
体内から徐々に排泄される放射性セシウムの特徴
南相馬市で行われた検査によるセシウムの検出率です。 http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/10,11982,61,344,html
放射性物質はエネルギー的に不安定な物質です。放射線を外に発散しながら(言い換えると崩壊しながら)、エネルギー的に安定した物質へと変化していきます。この速度をいわゆる「半減期」、放射性物質が半分になるまでの時間という言葉で表現します。
現在問題となっている放射性セシウムでいうと、セシウム134で約2年、セシウム137で約30年かかることが分かっています。
では、体内に取り込まれてしまった放射性セシウムも半分になるのに30年かかるのでしょうか? 実際にはそうではありません。尿や便などから徐々に外に排出する機能を生物は備えています。この速度は、放射性物質が崩壊する、いわゆる半減期よりも速く、成人の場合は、約4ヶ月で体内に存在する半分の放射性セシウムが排泄されます。6歳児では約30日、1歳では10日と、若ければ若いほど、その排泄の速度が速くなります。紛らわしいですが、これを「生物学的半減期」と言います。
もちろん、放射性物質の摂取によって内部被爆が起こることは確かです。しかし生物に備わっているこの機能のおかげで、放射性物質を取り込んだらそれによって、一生体が被爆し続けけてしまうということはないのです。放射性物質は、例えば水銀や他の有機リン系の化合物のように、体内に蓄積していくタイプの物質ではないことを覚えておいてください。
これによって、事故直後に取り込まれてしまったかもしれない放射性セシウムは体外に排出されているため、現在ではほとんどの方から放射性セシウムを検出しないという状況になっていると考えられます。
ただ、良い話だけではありません。次回はこれらの検査結果について、もう少し掘り下げて解説していきたいと思います。