さらに技法が発展して
技法やジャンルにしばられることのない、最近のアート作品には、「え!これも版画の技法をつかっているの?」というものもあるんです。この作品を「版画」と言われても、どこが版画か、ピンと来ません。今まで見てきた作品は、紙にプリントされていたからです。この作者である藤田夢香さんは、子供や旅先での風景、建物などの写真をアクリルの立体にプリントしています。そう、版をつくって、プリントする版画の手法をつかっているのです。
「どんなタイプの作品でも、まずは手法にこだわらないで見てください。藤田さんは別々の時間や場所で撮影したものを、ひとつの透明なアクリルに封じ込めています。そうすることによって、いくつもの『詩』や『物語』を紡いでいく、そこが藤田さんの作品の魅力です」。
この家の形は、高級カメラにつかわれるような、透明度の高いアクリルがつかわれています。光に透かせたり、角度を変えることで見え方も変わります。
「藤田さんの作品は、手のひらに載るような小さなものが多いので、身近なところに作品を置いて、作品と対話や会話をしてみてください」。
おまけ
今回お話を伺った、不忍画廊/SHINOBAZU GALLERYのオーナー・荒井裕史さんは、ギャラリーを経営しながら、作品を販売する仕事をしています。「新しい手法とか、描き方とか、一見して目に見えるものに興味や魅力を感じられているよう
です。しかし本当はその作品のコンセプトとか作品の内側にある一番伝えたいもの、一見しただけでは伝えられないものに興味を持ってもらう事が一番だと思います」。
【展覧会・イベント情報】
今回取材をさせていただいた、不忍画廊/SHINOBAZU GALLERYの展覧会情報です。
渡辺千尋展 「象の風景、ふたたび。」
2014年1月15日~2月8日
世界でも有数の「ビュラン(お札の印刷技法!)」の名手、渡辺千尋(わたなべちひろ/1944~2009)の回顧展。1989年に開催された個展「象の風景」。画集が刊行され、全出品作がプラハ国立版画美術館に収蔵されました。不忍画廊/SHINOBAZU GALLERYではその伝説的な個展出品作を中心に展示致します。
練馬区立美術館でも、2014年2月9日まで開催中。