雇用統計の先行指標的な存在
新規失業保険申請件数とは、失業者が初めて失業保険を受け取った件数を計算したものです。失業保険の受給を申請する件数が増えるというのは、それだけ雇用環境が悪化していることを意味します。米国は個人消費がGDPの7割を占めている国ですから、雇用環境が悪化すれば、それだけ個人消費が大きく落ち込むことになります。結果、景気が悪くなり、米ドルは売られやすくなります。
だから、為替市場に参加している人は、毎月第一金曜日に発表される雇用統計の動きに注目するのです。雇用統計の「非農業部門雇用者数」が、市場のコンセンサスに比べて良いのか悪いのか、あるいは「失業率」の増減がどうなっているのかということによって、ドルが買われたり売られたりするのです。
新規失業保険申請件数は、雇用統計に比べて発表の頻度が多いため、月1回しか発表されない雇用統計の間を埋めるものとして注目されています。新規失業保険申請が増加傾向をたどっていれば、次回発表される雇用統計の数字も悪化すると考えられます。逆に新規失業保険申請件数が減少傾向をたどっていれば、雇用統計の数字は良くなると考えられます。
景気の動きに対して2~3ヶ月程度先行する
ただし、週単位の増減のみで判断するのは、いささか危険です。というのも、ちょっとした特殊要因が絡んで、1週間単位の数字は簡単にブレるからです。したがって、毎週の数字の増減だけを見て、相場の判断を下すのは得策ではありません。新規失業保険申請件数を見る時は、大体、4週間の移動平均でチェックするのが普通です。つまり、1週間ごとに生じると思われる数字のブレを修正するため、移動平均という概念を用いてチェックするのです。
景気拡大局面か、それとも景気後退局面かを考えるには、毎週発表される数字の4週間移動平均値が40万件を超えているかどうかをチェックします。そして、その数字が40万件を超えている状態が続いている場合は、景気が後退局面に入ったと判断できます。
なお、新規失業保険申請件数は、景気のピーク・ボトムに対して、2~3ヶ月程度の先行性があります。そのため、マーケット関係者からの注目度も高くなるのです。