日本では心因性EDと器質性EDとの割合はほぼ半々ですが、その比率は年代によって異なります。例えば、加齢に伴う体の変化が現れる50歳代以降では器質性EDの占める割合が大きくなります。さまざまな血管障害や男性ホルモンの分泌低下などの危険因子が増えてくるからです。
しかし、40歳代以前では心因性EDが大部分となり、器質性の割合はさほど多くありません。そこで今回は、若い世代に多い心因性EDのうちでも相談されることの多い「妻だけED」と「外だけED」について考えてみましょう。
ホームでおとなしくなる「妻だけED」
夜のおつとめが待っているかと思うと家への足取りが重くなる「妻だけED」
当院に来られる患者さんのかなりの方が同じ悩みを抱えています。お家ではもうあまり欲情できないが「なんとか勃たないと申し訳ない」「もしかして、外でのことがばれるのではないか」などといったプレッシャーが強くはたらいたりするのでしょう。
「外ではできるのに」とひそかに股間に言い聞かせても、現実的に思うようにならずに苛立つ。あるいは、また勃たないのではないかというあせりで精神的に追い詰められると、ますますうまくいかなくなるのです。
最初は「疲れているから」などと言い逃れることができても、毎回となると、そんな言い訳も通用しなくなります。自衛策として「妻が寝室に入ってくると、寝たふりをしてしまう」という患者さんもいます。
勃起における内弁慶の「外だけED」
まるで奥様の呪いがかかっているような状態になる「外だけED」
多くの場合、社員旅行や出張などの宿泊先で起こります。ある意味、いわゆる「絶好の機会」ともいえるであろうこのタイミングを逃したら次はない、という過大な期待とプレッシャーが作用しているのです。「奥様の呪い型ED」といってもいいかもしれません。
症状は基本的に妻だけEDと同じです。「妻とならちゃんとできるのに、なんでできないのだろう」という迷いや「本当はこんなにだらしなくないのに」というあせりが、ますます自らを窮地に追い込んでしまうのです。
「男性の場合は、初めての相手だと刺激が強いので性交の成功率は高い。しかし、長年連れ添った妻とはマンネリになるのでうまくいかない」という考え方もありますが、非常に強い刺激を受けた場合には交感神経がはたらくので勃起しにくい場合があります。外だけEDはその典型例といえるでしょう。
EDは「満足な性交が得られない状態」
妻だけEDも外だけEDも、パートナーの立場は異なりますが、起こる症状は変わりません。では、どちらか一方とでは問題なく性交ができるのに、状況が変わるとできなくなる状態を単純にEDと片付けてよいのでしょうか。日本性機能学会では、EDを「陰茎の勃起の発現あるいは維持のできないために満足に性交の行えない状態、または性交時に有効な勃起が得られないため満足な性交が得られない状態」と定めています。
この定義ではパートナーとの関係に触れていません。ですから、パートナーの立場に関係なく「満足な性交が得られない状態」をきたせば、EDとみなされます。特定のパートナーと問題がなくても、別のパートナーとは支障があればEDということになります。
そう考えると、妻だけEDと外だけEDは、パートナーの立場を入れ替えた表裏一体の関係にあるといえるでしょう。
小さいうちにストレスの芽を摘む
妻だけEDと外だけEDに共通するのは、どちらも心因性EDであることです。心因性EDは体に問題がない場合が多いので、たいていの心因性EDには、ジェネリック商品などのED治療薬の服用が効果的です。心因性EDには失敗の繰り返しで不安が高まる結果、症状を悪化させる傾向があります。ですから、ED治療薬の助けを借りて成功体験を重ねることが回復の第一歩になります。
EDは陰茎の血管に起きる動脈硬化の一種と考えられていますので、バランスの良い食事や適度な運動などで動脈硬化の進行を遅らせることがEDの予防につながります。
心や体に緊張感を与える精神的なストレスもEDのリスクを高めます。ストレスが小さいうちに心身をリラックスさせる習慣をつけておけばEDを未然に防ぐことができるでしょう。
>>EDってどんな症状?なぜなるの?