下痢になるのはなぜ? 毎日9Lもの水分が流れ込む腸
腸の中の水分が、何らかの原因で吸収されないと下痢になります。
この大量の水分を吸収する大きな役目を担っているのが、小腸と大腸。特に小腸では、9Lの水分のうち8Lが吸収されます。残りの1Lが大腸に流れ込み、残りの大部分も大腸で吸収され、便中に残る水分は僅か0.15L。これがほど良い固さの便の水分量です。
この便の水分量が多いと下痢になりますし、逆に少なすぎると便秘となります。
下痢の原因と考えられる病気
下痢になる主な原因としては、以下のようなものがあります。■ 食べ過ぎ・飲み過ぎ/牛乳・人工甘味料・アルコールの摂取
⇒ 腸管内に水分が引き込まれる「浸透圧性下痢」
食べた物の浸透圧(水を引きつける力)が高いと、吸収されるべき水分が吸収されずに水分過剰となります。そうなると便の水分量が増え下痢になります。牛乳を飲むと下痢をする人がいますが、これも乳糖が十分に分解されず、浸透圧の高い状態になるためです。牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素は小腸から分泌されますが、大人になるとこの酵素がだんだん少なくなります。そのため、大人になると牛乳を飲むと下痢をする人が増えるのです。
ソルビトールやラクツロースなどの人工甘味料で便が緩くなるのも浸透圧が高いからです。便秘の際に用いるマグネシウム製剤も同じ作用です。食べ過ぎや飲み過ぎによる下痢の大部分も、消化不良による浸透圧性下痢です。アルコールを飲んでいる場合は、アルコールによる刺激も関係します。
■ ウイルス性腸炎・細菌性腸炎・潰瘍性大腸炎などの病気
⇒ 炎症により浸出液が増える「滲出性下痢」
ウイルス性腸炎や細菌性腸炎、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、腸に炎症を起こします。そうなると、腸から血液成分や細胞内の液体などが滲み出てきて、便の水分量が増加します。また、炎症が起こると腸の上皮細胞が障害されます。腸の水分吸収は上皮細胞で行われていますが、炎症によりこの細胞が障害を受けると水分を吸収できなくなります。これも下痢の要因となります。
■ 消化管ホルモンの影響や胆のう摘出術後
⇒ 腸粘膜からの分泌液が増える「分泌性下痢」
細菌の毒素や消化管ホルモンの影響により腸管の分泌が多くなると下痢になります。胆のう摘出術後に軟便や下痢になる人もいます。これは、胆汁を蓄えておく胆のうがなくなることにより、胆汁が多く流れやすくなることに関係します。胆汁が多く腸に流れることにより、胆汁に含まれる胆汁酸が大腸粘膜からの水分泌を増加させ、便中の水分が多くなるからです。
■ ストレスや緊張による過敏性腸症候群などの病気
⇒ 食べた物の通過が早くて水分を吸収できない「ぜん動運動性下痢」
腸は自律神経で支配されています。自律神経は意識して動かすことはできません。しかし、自律神経は感情や心の動きの影響を受けるため、腸にもその影響がおよびます。腸は第二の脳と呼ばれており、脳が不安やストレスを受けると、その信号が腸に伝わり腸の運動に影響を与えることがわかっています。
腸は食べた物を移動させるためぜん動運動を繰り返していますが、ストレスや緊張により自律神経に影響が及ぶと、ぜん動運動が早くなったり遅くなったりします。ぜん動運動が早すぎると食べた物が早く腸を通り過ぎるため、水分の吸収が不十分となって下痢をします。
ストレスや緊張、不安は便通異常を引き起こします。腸の検査をしてもこれといった異常がないのに慢性的な便通異常をきたす場合は過敏性腸症候群が考えられます。過敏症腸腸症候群は、下痢型、便秘型、下痢と便秘を繰り返す混合型に分類され、下痢型は男性に多く、便秘型は女性に多い傾向があります。
■ 薬の副作用・糖尿病・大腸がんなどの病気
⇒ その他の原因による下痢
抗生物質や抗がん剤など薬の副作用で下痢になることがあります。糖尿病を長く患うことで、自律神経の乱れをきたし、下痢や便秘になることがあります。また、大腸がんは便秘にもなりますが、下痢にもなります。
下痢の対処法・治療法・下痢止め薬使用の注意点
下痢の時は水分が不足して脱水になりやすいので、水分をこまめにとりましょう。また、下痢や嘔吐の際には、体内のナトリウムなどの電解質も失われます。電解質異常がおこると、痙攣や意識障害などをきたすことがあるので、水分摂取の際には、スポーツドリンクや野菜スープ、薄めた味噌汁など、塩分(ナトリウム)を含んだものを一緒にとるように心がけましょう。下痢止めは感染性腸炎の際に使用すると、体内の毒素や病原体の排出を遅らせる可能性があるため、使用は最小限にした方がいいでしょう。
過敏性腸症候群の場合は、生活習慣の改善や食事療法、薬物療法で改善する可能性があります。また、長引く下痢の場合は、炎症性腸疾患や大腸がんなどの病気の可能性もあります。下痢で悩んだら、近くの医療機関に相談しましょう。
【関連記事】