統合失調感情障害とは……妄想、幻覚にうつ病のような気分障害も
心の病気の中には、「気持ちが冴えない」といった気分障害的な問題だけでなく、例えばですが、「宇宙人が自分にメッセージを送ってくる」など、精神病様症状もみられる、統合失調感情障害というものがあります
今回は、この統合失調感情障害の特徴や症状、そして治療法などを詳しく解説します。
統合失調感情障害の特徴……統合失調症・うつ病などとの違いは?
統合失調感情障害の発症率は人口のおよそ0.5~0.8%程度とされています。その発症には性差があり、女性に多くなっています。そして、発症年齢は20代から30代にかけての若い年代が大半です。これにも性差があり、女性の発症年齢は男性より数年単位、遅くなる傾向があります。統合失調感情障害の特徴は、ほぼその名の通りで、統合失調症の精神病様症状と同時に、気分障害的な症状も出てきます。もっとも、これは、統合失調感情障害という単一の呼び名の付いた疾患というよりむしろ、統合失調症と気分障害を同時に発症している病態と見て良いのではないか、といった微妙な点もあります。
ここでご留意いただきたいのは、心の病気は一般に、脳内で起きている問題を明らかにして診断する訳ではありません。心の病気の診断の際に重要なポイントは、大まかに言えば「その時点までに出ていた精神症状」と「それが日常生活に及ぼす支障のレベル」です。実際の診断の際には、その人の生活環境や、それまでの病歴なども、その疾患に関連するファクターとして、併せて考察されます。
例えば、うつ病は代表的な心の病気の1つです。誰でもかかる可能性があり、それゆえ「心の風邪」という別名もあるほどで、ありふれた病気という観点からは、うつ病は風邪と対比できます。しかし、その診断に関しては、うつ病と風邪は全く対比できない面があります。
それは、体の風邪ならば、その原因がインフルエンザを始めとする何らかのウイルスや細菌感染なのか、その可能性は血液検査などでさらに追及できます。一方で、心の風邪とも呼ばれるうつ病の場合、たとえ症状がいかにも、うつ病でも、現時点ではその原因になっている、脳内の問題を追及する手段は無いも同然です。したがって、たとえ脳内で起きている問題が別々のメカニズムでも、現時点では別々の診断名が付く訳ではなく、現れている精神症状から、うつ病と診断されます。
同じような観点から、うつ病と統合失調症は、出てくる問題のタイプにはかなり差がありますが、その原因になっている脳内の問題が全く違うタイプとは、必ずしも言い切れません。その問題のタイプによっては、うつ病的な症状と統合失調症的な症状が共に出てくる可能性もあります。そうした状況を統合失調感情障害という、一つの病気と見ている可能性もあります。
統合失調感情障害の症状……妄想・幻覚・抑うつ症状・躁症状なども
統合失調感情障害では精神病様症状だけでなく、気分障害的な問題も現われますが、必ずしも、両者が常に同時に現れるとは限らず、精神病性の妄想や幻覚といった急性期の問題が落ち着いたあとに、気持ちの落ち込み等、気分障害的な問題が目立つこともあります。それで、統合失調感情障害で現れやすい、具体的な精神病様症状は個人差がかなりある事も含めて、基本的には統合失調症のそれと同じです。例えば、「自分の考えが誰かに抜き取られている」といった妄想が、その患者さんの妄想内容になっているかもしれません。あるいは「自分の行動を逐次コメントする声」に悩まされているかもしれません。
一方、統合失調感情障害で現れやすい気分障害的な問題は、基本的にはタイプは2つです。まずその1つは、抑うつタイプで、「気持ちが全く冴えない。口数は普段よりずっと少なく、寝付きも悪くなった」といった問題がこのタイプです。そして、もう1つは、この逆に、躁うつの躁がはっきり出てくるタイプで、「気分はすこぶる上乗。饒舌になっていて、睡眠時間はあまり必要ない」といった場合がそうです。また、場合によっては、抑うつ症状の一部と躁症状の一部があわせて出てくる場合もあります。
統合失調感情障害の治療法……治療薬がメインに
統合失調感情障害の治療法は、あらまし的に言えば、精神病様症状と気分障害的な問題が共に出る、その原因になっているはずの、脳内の機能を治療薬で調整します。具体的な治療薬に関しては、個々の状況に応じた選択になります。具体的には抗精神病薬など統合失調症の治療薬、リチウム製剤など躁うつ病の治療薬、そして抗うつ薬なども場合によっては選択肢です。そして、この疾患の予後を良好にするポイントに関しては、心の病気全般に通じますが、出来るだけ早く治療をスタートすることが第1です。そして家族のサポートも病気の予後にかなり関わります。実際、精神病院に入院されている患者さんが、家族の方がいつ面会に来られるか、といったことをかなり気になる様子になっていた時にも、家族の絆の大切さが、その様子を見た周りに伝わってくるものです。
また、統合失調感情障害では症状の現われ方が時にサポートしていく側にとって、なかなか理解しがたい可能性もあります。それゆえに、まわりのストレスがかなり大きくなるかもしれません。そうした際、まわりが気持ちを軽くしていくためには、まず、当人の病気を充分理解する必要がある…と、いったことも、この疾患に関する基礎知識として、皆さまどうか頭に置いておいてください。
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