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2014年、ドゥーパティスリーカフェ新始動(都立大学)(2ページ目)

2013年12月1日、都立大学の人気店「ドゥーパティスリーカフェ」は6周年を迎えました。オープニングよりシェフパティシエを務めてきた菅又亮輔氏が12月末をもって退職し、2014年1月より、新シェフの高山浩二氏による新体制がスタートします。菅又シェフと高山シェフへのインタビューで、それぞれのお菓子についてや、これからの抱負などを語っていただきました。【2015年4月閉店】

平岩 理緒

執筆者:平岩 理緒

スイーツガイド


菅又シェフが考案した「ドゥーパティスリーカフェ」のお菓子達

菅又シェフの「ドゥーパティスリーカフェ」での代表作。奥右:「エクストレーム」(560円)、手前:「スワイユ」(520円)、奥左「ムラングシャンティーキャラメルオランジュ」(420円)

菅又シェフの「ドゥーパティスリーカフェ」での代表作。奥右:「エクストレーム」(560円)、手前:「スワイユ」(520円)、奥左「ムラングシャンティーキャラメルオランジュ」(420円)


「ドゥーパティスリーカフェ」で6年間シェフを務めた菅又シェフに、お気に入りのお菓子をお伺いしました。

見るからに濃厚そうなチョコレートケーキ「エクストレーム」は、菅又シェフが新潟の名パティスリー「ルーテシア」で働いていた頃から、バレンタインなどに作っていたという、思い入れのある品だそうです。カカオ分70%のビターチョコレートを2種類ブレンドした濃厚なガナッシュと、小麦粉を使わずしっとりを焼き上げたカカオ風味の生地とを層に重ねた、シンプルなスタイル。最近は軽やかなムース状のお菓子も多い中、これは生チョコレートのように濃密で、アルマニャックの香りが広がる、大人のためのチョコレートケーキです。

「ドゥーパティスリーカフェ」オープン時に、インパクトのあるケーキが欲しいと考えてデビューさせたものだそうですが、今やスペシャリテとなったこのケーキ、「実は最初は全然売れなくて、正直、ちょっとくじけていたんですよ。でも、スタッフの中にこのお菓子を好きだと言ってくれる子がいて、少しずつでも売っていこう、と皆で言ってくれて・・」と菅又シェフ。「ドゥーパティスリーカフェ」の皆で育ててきた大切な一品でした。

ピスタチオのグリーンが鮮やかな「スワイユ」は、「絹のように滑らかな」という意味で名付けたそう。これもまた菅又シェフのスペシャリテです。オープンから1ヶ月ほどして雑誌の取材を受けた際、新商品のアイディアが浮かばず悩んだ末に、パティシエの世界でやってはいけないとされるタブーをあえてやってみよう、と生まれたお菓子だそう。

杏仁のようなビターな香りのあるピスタチオ味のバタークリームとカスタードクリームをブレンドした、コクのあるムースリーヌの中に、グリオットチェリーとブラックベリーのジュレとクレームショコラ入り。土台はカリッと香ばしく焼き上げられたアーモンド風味の生地です。

このジュレは、かなりみずみずしく、ドーム状のケーキを割るととろりと流れ出しそうなほど水分が多いのですが、通常、これを油脂分の多いムースリーヌと合わせると、接した面が分離してしまい舌触りがざらつくためNGとされるそう。しかし菅又シェフはそのセオリーに捉われず、両者をつなぐ役割としてチョコレートのクリームを挟むことにより、ムースリーヌとジュレの中間的な口どけをプラスし、ジュレの酸味を和らげ、味のうえでも見事なバランスを生み出しました。そこに土台の生地のサクッと焼き切った香ばしさが加わり、最後まで食べ進めたくなるお菓子となっています。
この二つのお菓子は、菅又シェフとっても特に思い入れの深いもので、「いずれ自分自身の店をオープンする際、形を変えても何らかの形で残したい」のだそう。

「ムラングシャンティーキャラメルオランジュ」を考案したのは2年前。フランスの老舗でもよく見かける“ムラングシャンティー”という伝統菓子をどうしても作りたかった菅又シェフですが、このお菓子は、日本人にとってあまり一般的ではない「メレンゲ」が占める割合が大きいため、“甘い”という印象で終わらせたくないと試行錯誤していたそうです。

2枚のメレンゲの間に挟んだキャラメル味の生クリームに、爽やかな香りを足すためにオレンジの皮を削ったものと、カスタードも少し加えています。低温でじっくり時間をかけて焼き上げたメレンゲは、しっかりと目が詰まった、水分を吸いにくい質感にするために、「ムラング・フランセーズ」という昔ながらの作り方で、最近は糖分を減らす傾向も見られる中、伝統的な配合に従って、しっかりと砂糖が卵白の2倍も入っています。それだけ糖分が多いのに、甘ったるく感じさせない工夫の一つが、食べると所々で出会う、カリッとした食感。メレンゲの中に、スペイン産のマルコナアーモンドの皮むきをホールで入れて焼くことで、その香ばしさと食感や味の変化で、飽きずに食べられてしまうのです。

このように菅又シェフのお菓子は「味にメリハリがある」「組み立てのバランス感覚が素晴らしい」という定評を得て、「ドゥーパティスリーカフェ」は、本格的なフランス菓子を求めるファンが訪れる人気店となりました。
次のページでは、「ドゥーパティスリーカフェ」で、菅又シェフのお菓子がいつまでいただけるのかについて、お知らせします。

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