手帳はとても裾野の広いジャンル
最近では、手帳と言った時、多くの方が思い浮かべるのは、スケジュール管理のための「手帳」なのですが、昔の人の手帳を見ると、ギッシリと日々の覚書が書かれていたり、食事の献立が書かれていたり、趣味の研究について書かれていたりと、様々に使われていたのが分かります。実際、現在でも手帳の使われ方は十人十色で、だからこそ「手帳術」なんて言葉が生まれたりもするのでしょう。特に、ここ数年はスマートフォンの普及により、スケジュール管理や住所録といったデータベース的なものはデジタルに、それ以外は紙に、といった具合に、スマートフォンと手帳、スマートフォンとノートの併用が主流になっています。元々、紙の手帳は、スケジュールや住所、メモや研究、調査結果やアイディアといった、自分だけの情報を常に持ち歩き、また、常に更新出来るように小型化したノートでした。そこから、連絡先は一つにまとめた方が効率的だという事で住所録が生まれ、スケジュール管理が手帳の中での大きな位置を占めていた事から、タイムマネージメントの機能を付加され、行動管理のための方法としてToDoリスト機能が追加され、といった具合に変化し、細分化しています。その手帳の変化の方向の中で、デジタルの手帳である「電子手帳」という発想も生まれました。
電子手帳の進化の歴史を振り返る
ただ、電子手帳の歴史は、今で言う手帳っぽい事をデジタルに置き換えたいという発想から始まったわけではありません。電子手帳的な最初の流行は、ヒューレットパッカードの高級電子計算機のラインアップから登場した、「HP100LX」という電子計算機とパソコンの中間のようなガジェットあたりから火が点きました。その時、HP100LX、そして後継機でガイド納富も熱狂したHP200LXで、私たちは何をしていたかというと、テキスト書きとパソコン通信、そして細かいメモの管理や、使いやすい環境の構築です。後は計算機だったのでエクセル的な使い方もしていました。それは、手帳というよりも、ポケットに入るこの小さな機械で、あらゆる情報を管理したり生み出したりしたい、という欲求でした。HP100LXを開いた所。小さいけれど打ちやすいキーボードと、サイズに似合わない大画面、ユーザー製作によるアプリケーションやツールの数々で、実用性も高かった。ガイド納富は新婚旅行時にこれでバリ島から原稿を書いてファックス送信で入稿した。
PDAという概念と共に生まれた製品群
その後、PDAという言葉が生まれました。パーソナル・データ・アシスタンスの略で、つまりは個人情報管理端末のことです。要するに「電子手帳」ですね。シャープの「ザウルス」や、米Palm社の「Palm」、Handspring社の「Visor」、ソニーの「CLIE」などがヒットしました。ビジネスマン向けの機能に特化した「ザウルス」、手書き入力とシンプルな使い勝手が人気だった「Palm」、マルチメディア指向だった「CLIE」、安価でカッコよかった「Visor」など、それぞれに特徴はあったものの、どれもが、基本的にタッチスクリーン搭載で、キーボードは搭載せず、最小限のスイッチ類とスタイラスペンで操作する、という共通点がありました。ホーム画面にアプリのアイコンが並ぶPalmの姿は、まるで現在のスマートフォンを見るようです。ただ、この時点では、あくまでも個人的な情報を管理するツールでした。ザウルスは名刺管理とスケジュール管理に強く、Palm系はメモやToDo管理、データベース管理が得意でした。ただ、それらの機器のどれにも、カメラや通信機能は付いていない、または付いていても快適には程遠い物でした。だから、生活や仕事の中で本格的にパーソナル・データ・アシスタンスが必要となった頃には、何となく使われなくなり、時代は携帯電話とデジカメと紙の手帳を組み合わせて使う方向へと向かいました。そして、紙の手帳によるタイムマネージメントが流行したのは、丁度、この時期になります。これらが、もう一度統合されたのが、現在のスマートフォンと言えるでしょう。