犬を預ける際にもしつけは大事
犬としての社会性を身につけ、ある程度しつけられた犬は落ち着きもあり、順応性が高い
さて、犬を預ける際には普段からどんなところに気をつけていたらいいのか?ということについてお聞きしたいのですが。
小川さん:
何より、基本的なしつけを入れておくということと、犬としての社会性を身につけさせておくということに尽きますね。たとえば、トイレシートでトイレができるようにしておけば、カフェや旅行に行く時などにも役に立ちます。
ガイド:
トイレを我慢して体に変調をきたしたりすることもないでしょうし、ケージ型ホテルであれば、その中でウンチやオシッコまみれになるということも少なくなるでしょうね。
小川さん:
毎日お預かりした犬たちを見ていて感じるんですが、吠え癖や咬み癖など何か問題行動をもっているコってたいていボスキャラなんですよ。つまり、飼い主さんがただ可愛い可愛いだけでリーダーシップを発揮したしつけをちゃんとしていないと思われるケースがほとんどなんです。人間の子供を何のしつけもせずに育てたとしたら、精神的に情緒不安定になるでしょうし、学校へ行ったとしても周りとうまくやっていけないでしょう。犬の場合はいつまで経っても子犬のように可愛いので、犬も大人になるのだという意識に欠ける飼い主さんも多くいらっしゃるように思います。ゆえにしつけを軽んじてしまう、しつけること自体が可哀想だとさえ考えてしまっている飼い主さんもいるように思います。
ガイド:
犬の世界には、「ジャーマン・シェパードは訓練を入れてこそジャーマン・シェパードだ」という言葉がありますが、それはどんな犬種、どんな犬にも通じることだと思いますね。「犬はしつけを入れてこそ犬になる」という意味で。
小川さん:
そうですよね。しつけをしてなかったばかりに手に負えないコになってしまった。だからペットホテルやペットシッターに預けようと思ってみても断られてしまう。これでは折角利用できるサービスがあったとしても選択肢をどんどん狭めているだけで、とても残念なことだと思います。それに、いろいろな物や人、環境に慣れさせ、犬としての社会性を身につけ、ある程度しつけられた犬というのは精神的にも落ち着いていますし、環境が変わっても順応性が高い。
ガイド:
預けられた先でワンワン吠えどおしのコは、そうしたものが少し欠如しているのでしょうね。
小川さん:
確かにあるでしょうね。
ガイド:
そうなったらそのコ自身のほうがよほど大きなストレスを受けているということですよね。吠えるとか咬むとか、トイレの粗相など何かしら問題を抱えるコを預ける場合、中には「あなたたちプロなんだからテクニック1つでどうとでも対処できるわよね?」と勘違いなさっている飼い主さんもいらっしゃるんじゃないかと思いますが。
小川さん:
しつけというのは一瞬にしてどうにかなるものではありません。やはり積み重ねることが大事なんです。人間の子供を引き合いに出せば、何のしつけも教育もせずに育った子は社会に出ても自由奔放、周囲に迷惑をかける言動をとるようになるだろうということは想像できます。犬も似ているところがあると思います。しつけや社会化がなされていない犬は周囲に迷惑をかけることも多くなりますし、何よりそのコ自身が不幸だと思います。
ガイド:
そういう犬や飼い主さんがいた場合、小川さんのところではどう対処なさっているんですか?
小川さん:
やはりお客さんあっての仕事ですから、言い方には気を使いますが、「ここをもう少しこう治したほうがワンちゃんの幸せのためにもいいと思いますよ」と多少オブラートに包んだ言い方で話すようにはしています。ちゃんとしつけや社会化がなされて、愛情をたっぷり注いでもらえている犬って顔つきが違うんですよ。
ガイド:
目が違いますよね。
小川さん:
そうです。どんな飼い主さんもそれぞれの感覚で自分のコを可愛がっているのだとは思いますが、人間の社会で共に暮らしてもらう以上、最低限必要なルールを覚えてもらう、そして犬は犬として精神的に自立できた接し方をしてあげるということは大切だと考えています。それによって多くの問題は解決できるんじゃないかと私は思っているんです。何より、必要なしつけをしてあげるということは、犬と飼い主、双方の幸せにつながるんじゃないでしょうか。
さらに次のページでは、実際にペットシッターに犬を預ける時のポイントについてお話いただきます。